「せちがらい世の中の善意を描いた音楽青春映画」イエロー・ローズ 希望の歌 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0せちがらい世の中の善意を描いた音楽青春映画

2021年8月27日
PCから投稿

アメリカにいるフィリピンからの不法移民の少女が、母親が強制送還となり、大好きだったカントリーミュージックのシンガーを目指す。ストーリーは実にシンプルだ。

カントリーシーンの現在を覗きつつ、合間に移民の現実問題を垣間見せる。ほどよく社会派の音楽映画と言ったところだが、主演のエヴァ・ノブルザタの好演と歌声もあって、とても品のいい心地よさがある。

そして、勝手に保守的な世界のような先入観を持ってしまうカントリーの世界が、この映画はとても抜けが良くていい。主人公のローズは、さまざまな人に助けられるが、誰もがせちがらい世の中で自分の限界を感じつつ、音楽が好きであるという共通項だけで相手を認めて、できるだけのことをしようとする。

移民の厳しい現実を描く映画はたくさんあるが、苦味も忘れず、しかし善意に満ちた本作は、派手なところはなくとも新鮮に映った。

(そしてこのナチュラルで瑞々しい主演女優は誰だよ!?と調べてみたら、若くしてブロードウェイで活躍しまくっている人でした。いやはや、さすが)

村山章