劇場公開日 2021年6月25日

  • 予告編を見る

「軽薄、低俗、そして冷徹。」愛について語るときにイケダの語ること シンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0軽薄、低俗、そして冷徹。

2021年6月26日
Androidアプリから投稿

ある日。そう、あなたがひまつぶしにこの投稿を読み始めるような、こんななんでもない日に、自分の余命が宣告される。予兆も警告もない。実際にそれを伝えるのはあなたの主治医かもしれない。しかし肩越しで彼にそう云わしめているのは死を司るもの、死神だろう。この神に睨まれた者の多く(私もその一人)は突然の審判に、ただ恐怖におののき現実を直視できまい。
 この映画の監督であり主役でもある「池田」はこの作品を武器にして、誰もが恐れ、目を背ける死の番人との対峙を「演じ」る。
 しかし、彼が死神に向けて放つ弾丸は「チ◯ポ」である。作中彼は「チ◯ポ!」を連発し、実際に彼のチ◯ポ使用画像が幾度となく登場する。
 なんと軽薄!なんと低俗!なんと軽妙!そしてなんと冷徹な自己への眼差し!
死神のやり口を「池田」は知っている。人間が恐れる死を目の前にちらつかせ、末期の人間を恐怖で支配する。そして足元にひれ伏す姿を最上の喜びとしていることも。
 彼は一ミリも後退せず、軽薄に、低俗に、軽妙に「死」をやり過ごした。彼は何者にも支配されずに「作品」をエンドロールまで導いた。
 私はこの映画を身障者モノとして観ることよりも、ある男の末期の在り様を観たいと思った。そして彼は末期の物語を自分なりに完成させたのではないか。誰にでも出来ることではない。
 先に記した「死神に向けた弾丸」であるが、その弾丸はもしかしたら、あるいは健常者社会にも向けられていたかもね。身障者に「健全」を強いる私達に。

シン