劇場公開日 2024年3月1日

「もう少し全体的に配慮が欲しかった…という一作。」コットンテール yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5もう少し全体的に配慮が欲しかった…という一作。

2024年3月11日
PCから投稿

今年98本目(合計1,190本目/今月(2024年3月度)16本目)。
(前の作品 「オーシャン・クライシス 沈黙の核弾頭」、次の作品「Moonlight Club in 長寿庵」)

 ストーリー自体はほぼほぼ一筋で、遺言の内容を果たすためにイギリスにいって散骨をするだけ、という本当に単純なロードムービーの亜種の類で、ストーリー自体にひっかけ要素がまずなく(ただ、途中で時間軸が結構変わるのは混乱するかも)、日英合作という事情からも、どちらの文化も取り入れたという考え方から「混乱の要素はないが、逆に短い放映でストーリーが一つだけである」ので、個々気になる点もあります(この点後述)。

 映画のサブ筋としては、いわゆる末期医療に関することや認知症に関すること、また「親の介護は子の義務か」というような、今でも議論されるようなところに飛ぶところはありますが、それらはあくまでもサブ筋の扱いのようで(日英合作という事情から、イギリス側でこれらの日本の事情がわかりにくい、というのもあるのだろうとは思います)、それらが「出てくるだけで大半すっ飛ばされてしまう」のがちょっと厳しいかな…といったところです。

 今日(3/11)はアカデミー賞の発表ということもあったのか、映画館がガラガラで(賞をとった映画を放映している映画館は固定されているので)、コロナ事情の真っ最中でみられた本当に「ガラガラ」といった状況にある意味驚いたのですが(大阪市は大雨でもないし別に月曜日から映画館くらい行けるはず)、そういった事情(おそらく、賞をとった映画のほうは満席状態だった?ただし別の系統の映画館)なのだろうと思います。

 ここでは感想として触れている方が少ないですが、それでも私は法律系資格持ちなので…。解釈上ごまかせない点や気になる点(これらは、この映画が90分と短いといったことからも派生する)もあります。個々触れていきます。

 採点は以下のようにしています。

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 (減点0.3/遺言状の開封について)

 遺言状は公正証書によるもの以外は、家裁に提出した上で開封する必要があり(1004条1項3項)、勝手に開封すると過料も課されます(1005条)。

 解釈上やっかいなのが、「遺言と言えるか?」というタイプのもの、つまり「相続はだれそれ、土地はだれそれ」といった内容がなく、単に「散骨して欲しい」といった「最後の意志」だけがある場合にそれを遺言というかが解釈上争いがあるのですが、遺言の中身をあらかじめ知ることができない以上、「様態から遺言であると推知できるもの」には幅広く適用される(つまり、家裁での開封処理を要求する)というのが通説的な考えで、映画内の描写はややまずいかなといったところです。

 ※ ただし、家裁の検視を経ない内容は「過料に処されるだけで内容の有効無効には関係しない」というのが判例(昭和3.2.22(大審院のころの判例))です。

 (減点0.2/散骨と墓地埋葬法、死体損壊罪等との関係)

 まず、日本人が外国で何かをする場合、その外国の法や、日本では「法の適用に関する通則法」が適用されます。

 散骨については現在ではよく見られるようになったのですが、墓地埋葬法、死体損壊罪に触れるという解釈論も根強い一方で、これらの散骨行為は宗教的な観点で行われることが多々あることから、「あまりに無茶苦茶なことをしない限り警察も司法もノータッチ」というのが現状で(宗教論になるので、政教分離をうたう日本ではこれらは議論しにくいので、学問上の争いとは離れて検挙例はまるで見当たらない)、実際の摘発例はほぼもってないものの「学問上の争い」は実際かなりあるので、この点、何らかのフォローが欲しかったです。

 ※ 散骨が少しずつ知られるようになった平成10年以降では、条例で散骨を禁止する市町村もあらわれたものの、こうした規制は宗教論に基づく感情論にかかわるため、条例の撤廃を求める運動(←地方自治法)が激しく行われ、現在では「ガイドライン」等で「最低限これだけは守ってね」というようになっています(秩父市、熱海市など、散骨のメッカとされるような市町村において)。

 (減点0.1/主人公の英語のレベルが変?)

 序盤の回想シーンで「英語で食べている」といっている割に、イギリスに行くと英検3級の面接会場ですか?みたいな話し方しかしないのが気になりました。
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yukispica
Mr.C.B.2さんのコメント
2024年3月15日

今はどうか知りませんが、私が中学生の頃の英語教師は発音はあの程度でしたよ。
ちなみに私は英検2級です。

Mr.C.B.2