劇場公開日 2022年1月21日

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「☆☆☆★★★ 「機長!何をするんです!」 後にビートたけしの持ちギ...」ブラックボックス 音声分析捜査 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5☆☆☆★★★ 「機長!何をするんです!」 後にビートたけしの持ちギ...

2024年3月21日
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☆☆☆★★★

「機長!何をするんです!」

後にビートたけしの持ちギャグとなる【逆噴射】の羽田沖墜落事故。
そして御巣鷹山に消え。当時の人類史上最悪の飛行機事故となった、日航機墜落事故。
その際に社会的に有名になったのが、航空機に搭載されていたブラックボックス。

個人的な事ですが。映画の中で、パソコンを使用してサスペンスを盛り上げようとする作品には、今ひとつ「面白い」と感じる作品が少ないように思えます。
これには、オジサンであるこちらのパソコンに対する拒否反応が色濃く出ています。
以前は何とか覚えようとした時期もあったのですが、、、
しかし、スクリーンに映っているのは人間。
少なくともパソコンの場面が映っているよりも、人間がアクションを起こしている方が、どうみても面白さが出ると思うんですけどねえ。

とは言え、そんな中からも充分に面白い作品が出る時も有って。そんな作品の1つが数年前に公開された『search /サーチ』でした。

〝 真実はネットの中にこそある 〟

観ていて「その手があったか〜」…と、感嘆したものでした。
そしてもう1本。この本編のように、音声のみでサスペンスを盛り上げる作品だったのが『THE GUILTY/ギルティ』でした。
音声認識とゆう特殊能力を持つ人間だからこそ、真実へと近づく事が出来る。

但し『THE GUILTY/ギルティ』は、音声での単純な犯人探しではなく。主人公の心の奥底に棲む【真実】を、画面上に映る指に貼られていたバンドエイドであったり、結婚指輪を映し。観客には画面上に映る現在進行中の出来事よりも、物語には映らない以前に起きたのであろう?出来事を想像される秀逸な物語でした。

そんな『THE GUILTY/ギルティ』と比べてしまうと(比べるモノでもないのですが)この作品には、主人公の妻の存在であり。その妻と改竄の首謀者との関係等には、この作品でのクライマックスにあたる《ブラックボックスの存在》と同様、物語の在り方として多少の都合の良さ等を感じない訳ではない。

最初にパソコンを使うサスペンスは、、、と書いておきながら、実は面白く思いながら観ていた場面が有って。それこそが、主人公がパソコン上に映る音声分析を聴き込みながら「何とか真実へたどり着こう!」と、必死に自らの分析能力をフル回転させ集中している場面。

主人公が筋肉モリモリの強い男ではなく。如何にも神経質な眼といい、この職業への強い拘りを感じさせる演技であり。ヘッドフォンを通し、拘りの《音》へのアプローチ。カメラアングルと共にスムーズな移動撮影等は必見と言える。

…と同時に、やはり映画はアクション在ってこそ!と思わせてくれる。
特に秀逸だったのが、今では当たり前の様に車に車載されているカメラの使い方。
主人公がその車載カメラを意識する瞬間は「しまった!ヤバイかも!」…ってゆう表情だったのが、「そうだ!アレだ!」と思いつく時の脚本の巧さ。
更には、「俺ひょっとしてヤバイ組織に狙われているのかも?」…と、事件の匂いを嗅ぎつけて不安に駆られ。悩み始めてから、強いストレスに身も心も削られて行くサスペンスの盛り上がりも、上手い…って言うか、本当にずるい。
動物を使用したちょっとしたB級ホラー的な演出でさえ、使い方によってはまだまだ充分に面白くなるのだから。
そうそう、クライマックスでのサスペンスを盛り上げる主人公の周りをカメラがグルグルと何回も回り込むカメラワークも、【やり過ぎ感】を1歩手前で回避し、作品に対しての絶好の調味料となっていた。

それでいて些細な部分にも疑問視する神経の細やかさ。それによって自身を悩ませる身体的な情弱さであり、ヤサ男だからこそ暴力に対抗出来るのか?…と観客を一気に不安にさせる。

観客をその場に居合わせる臨場感の狙いと。音だけなのに、映像で示す為に生じる違和感。
勿論、それは映画的な演出であり。それによって観客を引き摺り込む常套句でもある。
が…しかし、その際の墜落に直接関係してしまった有る人物の、〝 まずい、、、どうしようもない 〟と言った表情であり、その場に居合わせている全ての人の感情等は。当たり前ではあるけれど、演出による想像であり。(映像を挿入しなければならない為とは言え)勝手に作られた映像であるのを多少は理解しなければならない。
それは、何よりもこれは劇映画だからこそ。
映像で観客に追体験を促し、サスペンスを盛り上げる為にはどうしてもその様な演出・映像が必要になって来る。

それを理解した上で。以前にテレビで放送された、あの日航機墜落事故の時に御巣鷹山に墜落したコクピットの中で《何が有ったのか?》…とゆう疑問を、全て公開されたブラックボックスの全貌。
ただひたすらに「頑張れ!」と励まし続けた機長の叫びの声。その【音声のみ】が、どれだけこちらの・放送を見た国民の心を掻き毟るくらいに胸を打ったのか…と。

サスペンス映画としては及第点以上。それでも本物の【真実の声】の前では、作り物の映像ではまだまだ及ばないのかも知れない。
「だったらお前はドキュメンタリー映画だけ観とけ!」って言われそうですが(ー ー;)

2022年1月21日 TOHOシネマズ/シャンテシネ1

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松井の天井直撃ホームラン