劇場公開日 2021年4月2日

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「まず、理解して欲しい」僕が跳びはねる理由 ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0まず、理解して欲しい

2021年5月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

作家、東田直樹さんが13歳の時に発表した「自閉症の僕が跳びはねる理由」をベースにした作品です。東田さんのことは本作で知りました。
ドキュメンタリーと言うことですが、ただのドキュメンタリーでは無いような。まず、作家自身であるかのような少年が跳ねるように歩く風景と、不思議な映像が続き、彼が見ている世界はこんな風なのかもしれない、という世界を映像化したのだと分かります。そして、東田さんの著書を翻訳した英国人作家や、実際の自閉症の子供たちとその家族の証言で構成されています。
アフリカの母親が、周囲から奇異な目で見られると訴えた時の周りの視線は演出のように見えましたが、理解しやすい作り方だと思います。

私は自閉症について学んだわけではありませんが、自閉症と、そうでない人の境目は曖昧なのだと思います。実は知性がある、みたいな見方も、自閉症を特異なものとして一括りに考えてしまっているのではないでしょうか。
私のいとこ(故人)はたぶん自閉症でしたが、彼の家族が話さなかったので正確には知りません。私の父も自分の世界に閉じこもりがちな人でした。いとこと父は血縁ではありません。
自閉症とは、例えば物事の受け止め方が他の人とは違うとか、他人とのコミュニケーションが取りづらいとかの個性であって、その傾向が特に強い人が自閉症と診断されるのだと思います。

昔は悪魔憑きという風にみられた、という話。もしかしたら中世の魔女狩りの被害者の中にも自閉症の人がいたかもしれないとしたら、自分と違うものは受け入れられないという事が、時には悲惨な結果を招くのです。

この作品は、自閉症の人も健常者(と呼ばれる人たち)と同等に扱うべきだと言っているのではありません。実際、付き合っていくのは大変な事もあります。ただ、もっと知って欲しい、個性として理解して欲しいと言いたいのです。でも親たちの子供を心配する気持ちは切実で、そこはフォローしてあげられる世の中になって欲しいです。

ゆり。