劇場公開日 2022年12月3日

「THE FIRSTの意味する処」THE FIRST SLAM DUNK だるちゃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5THE FIRSTの意味する処

2023年8月24日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

原作マンガは、劇場版公開直前に発売された総集編をチラ読みした程度、TVアニメは、途中の数話をamazon primeでチラ観した程度なので、登場人物の関係性や過去の経緯はサラッとだけ予習したものの、99%初見の状態で、独立した単体作品として、劇場版を鑑賞する形となりました。

結果、1本のアニメ映画としては、大大大満足でした。

公開前に、主人公が変わったとか、声優陣が全交替したとか、ギャグが無いとか、重要シーンがカットされたとか、CGのクオリティが低いとか、散々にネットで炎上していたのは知っていましたが、初見なのでネガティブ(?)要素は、全く気になりませんでした。

むしろ、不思議なもので、ジャイアンの声だと叩かれている花道ですら、この映画の絵面にはマッチしていると感じ、後でTVアニメを観たら、逆の違和感を感じてしまいました。

なので、過去の思い出を忠実に再現してほしい旧来ファンからは拒絶反応が起こるのも仕方無いとは思いますが、だからと言って、作品自体の出来具合や、高評価している人を全否定するのは、単なる自分の価値観の押し付けだと思います。

主題歌も、爽やかな90年代ポップスから、ハードな10FEETに変わりましたが、リアルでシリアスな作風の本作に対しては、汗臭いハードロックの方がマッチしていると感じました。

また、ギャグシーンがカットされたとの不満も出ている様ですが、本作の緊迫したストーリーに混ぜ込ませる必然性は感じませんでした。

恐らく、旧来ファンにとってみれば、TVアニメの声優陣、90年代ポップス、ギャグシーンを含めたトータルが、自分達の大好きだった懐かしのスラムダンクなのかもしれませんが、少なくとも初見の自分にとっては、本作こそが自分にとってのスラムダンクです。

また、敢えてTHE FIRSTとしているのは、旧来ファンも、新規ファンも、新たな気持ちや新たな視点で鑑賞して欲しいという原作者の思いが込められているのではと、自分なりには解釈しています。

原作者にとってみれば、旧来ファンに大人気だったTVアニメよりは、本作こそが本来自分が描きたかったタッチだという意思表示でもある様に感じました。

さて、前置が長くなりましたが、ここからが作品のレビューです。

まず、鉛筆書きから始まるオープニングのシークエンスと、そこに流れる図太いベースの音に、いきなり鈍器で頭をガツンと殴られた様な衝撃を受けました。

まさかここでヘビーなミッシェルガンエレファントの歌声が聞けるとは思いませんでした。

これほど、闘争本能を掻き立てられる曲は無いと思います。

図太いベースの音が流れた瞬間、この作品の目指す世界観や、監督でもある原作者の意図した世界観を理解出来ました。

2時間4分と、アニメ映画としては長目の上映時間でしたが、非常にテンポが良いので、途中でダレる事は一切無く、スタートダッシュして、そのままのスピードでゴールまで全力疾走したした印象でした。

途中で挿入されるリョータのフラッシュバックが余計だという意見もありますが、現時点での彼の心理状態を理解するために必要なシーンばかりだと思います。

何より度肝を抜かれたのは、作画の発想と、音響の使い方です。

バスケはコンマ数秒を競うスポーツですが、その瞬間を作画で表現するためには、セル枚数を増やせば良いだけでは限界があるので、CGやモーションキャプチャーを利用するのも、ひとつの手法としては非常に有効だったと思います。

原作者兼監督が本作で表現したかったのは、スラムダンクというストーリーにに被せつつ、リアルなバスケットボール選手の挙動を忠実に描写する事が本作の最大目標だと思いますので、それを実現するための最良な方法を模索された結果、あの疾走感が生み出されたのだと感じました。

今年最高の映画というレビューの次に、今年最低の映画というレビューが並んでいる状態ですが、これほど明確な賛否両論があるのは、それだけ新たな方向性へ振り切った証拠だと思います。

新規ファンはもちろん、旧来ファンも、THE FIRSTな気持ちで、劇場へ足を運ぶ価値は充分にある作品だと思いました。

だるちゃ