劇場公開日 2021年7月16日

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「深刻な題材の向こうに重厚なドラマが浮かび上がる」少年の君 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5深刻な題材の向こうに重厚なドラマが浮かび上がる

2021年7月29日
PCから投稿

正直、魂を射抜かれたような気持ちだ。本作はいじめ問題や受験戦争、親の出稼ぎ、孤立を深める子供達などの深刻な題材を丁寧に折り重ね、その絶望の縁で絆を深める二人の主人公にグッとカメラを寄せていく。彼らは一般的に見ると、片やエリート志望の高校生、片や人生の道を踏み外した不良。しかしその実、神も救いもない世界を生き延びる上で、まさに出会うべくして出会った二人でもある。序盤はある種の息苦しさが物語を支配し続けるが、半分を超えると僅かながらに眩い光が刺す。それが表すのは、生やさしい希望や恋愛感情というレベルのものではなく、心の底から身を寄せ合える者を得た”やすらぎ”。おそらく彼らが人間として初めて味わった無垢なる感情に違いない。また二人をギリギリのところで社会へ繋ぎ留めようとする刑事の目線も後半になって効いてくる。シリアスな題材に身構える人も多かろうが、いざ飛び込んでみると深い感動がこみ上げる秀作だ。

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牛津厚信