劇場公開日 2021年3月20日

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「後ろから背中を拝まれる人たらん」生きろ 島田叡 戦中最後の沖縄県知事 pipiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0後ろから背中を拝まれる人たらん

2021年4月29日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

本土の人であるにも関わらず、沖縄県職員の慰霊塔「島守の塔」に名が刻まれている島田叡(あきら)氏とはどのような人物であったのか?
資料は数枚の写真ばかりで、島田氏本人の音声や映像は無い。
佐古監督は、島田氏を知る人々への取材や、部下が残した手記、新聞記事などから島田氏の言葉を拾い出していく。本人の断片的な言葉を再構築する事で人物像を浮かび上がらせるという新しい手法の試みによるドキュメンタリーが本作である。

死地に赴く事を承知の上で、島田氏は家族を大阪に残し沖縄知事に就任する。直ちに大規模な疎開を促進、自ら台湾に飛び、沖縄住民の為に大量の米を確保。住民の「命を守る」事を第一義に次々と施策を断行していく。

内務官僚として軍の命令に従う事が県知事の職責。しかし軍は「軍官民共生共死」大方針を掲げている。軍部の意向に真っ向から反することは住民のためにもならない。行政官として住民第一主義の信念のもと、住民を守る事との二律背反が島田氏を苦しめる。

最後は玉砕命令に反し、県庁の解散を宣言。官僚の立場ではあり得ない言動だ。そもそも県知事にその権限は無いが職員や住民の命を守る為に自分1人が責任を取る覚悟をしたのだ。周囲に「生きろ!」と希望を与え、自分は組織への責任を果たしに司令官の元へ向かう。絶望の中で消息を絶った島田氏の胸に最後に去来するものはなんだったのであろうか・・・。

組織と個の関係、結局最後に試されるのは、組織の中にあっても、その人の信念や覚悟、個人として、「人間」としてどう行動するかが問われる事を、島田氏は教えてくれる。

偉い人、立派な人とは、肩書きでも学歴でも財力でもない。
「後ろから、背中を拝まれる人」の事だ、という島田氏の言葉を覚えている人がいた。

左古監督は「『これは間違いだ』と思ったときに、しっかり方向転換できるのかどうか? その決断ができなかったゆえに沖縄の悲劇が生まれた」
と述べる。
島田氏の苦悩の軌跡は、「組織」の中での「個」の在り方。とりわけ、リーダーの在り方について、強く、深く、問いかけてくる。
「戦争に突き進むこと」「戦争に引きずり込まれること」「国家が好戦的な雰囲気になること」
今、21世紀の日本も真剣に考えねばならない事態に直面していると思う。
事実から眼を逸らす事なく、沖縄に刻まれた歴史から、私達も未来への教訓を学び、活かしていかねばならない。
それこそが、島田氏の背中に手を合わせる為の、ただ一つの方法なのではないだろうか。

pipi
NOBUさんのコメント
2021年4月29日

今晩は
 当方が消した部分への言及、畏れ入りました。
 このドキュメンタリー映画に対して,変な誤解を受けるのは嫌だなと思いまして。
 今サイトは聡明なレビュワーが多数いらっしゃるのが好きなのです。
 私事ですが、漸く、明日から連休に入ります。
 さて、この10日間をどう有意義に過ごそうかな・・、と考えていますよ。
 今しかない(と思いたい)この状況下での連休を如何に有意義に過ごすかは、今後に活きるだろうと勝手に思っています。

NOBU
NOBUさんのコメント
2021年4月29日

凄みあるレビューですね。
「後ろから、背中を拝まれる人」になるには、まだまだマダマダ精進が必要だなあ。後、15年経って、赤いちゃんちゃんこを着た時に、「後ろ指さされる人」ではなく、「後ろから、背中を拝まれる人」の端くれになれるようにしなければ・・。

NOBU