劇場公開日 2021年6月25日

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「すれ違って来た男女にご褒美のバレンタインデーが」1秒先の彼女 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0すれ違って来た男女にご褒美のバレンタインデーが

2021年6月26日
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子供の頃から人と比べて何をするにもワンテンポ早い郵便局員、シャオチーと、逆に、いつもワンテンポ遅れるバス運転手のクアダイ。ただ毎日郵便局の窓口で顔を合わせるだけだった2人の運命が、バレンタインデーに激変する。と言うか、知られざる彼らの歴史が、空白の1日に詳らかにされる。シャオチーの記憶から突然消え去ったバレンタインデー。その24時間が、クアダイにどんなチャンスを与え、シャオチーにとっていつも謎だった過去の出来事の意味を浮かび上がらせるのだ。たった1日のタイムトリップを利用して、凝ったSFXやびっくりするような展開を用意せずに、ただ、ゆっくり生きることのご褒美を描く映画は台湾発。『熱帯魚』や『ラブゴーゴー』で冴えない人々にスポットを当て、そこから、オフビートな空気感と台湾人らしい優しさと人情を浮かび上がらせたチェン・ユーシュン監督の最新作である。ヒット狙いの大作が好まれる昨今の台湾映画界にあって、作りたい映画しか作れないと語るユーシュンの映画人としての在り方が凝縮されたような本作は、やっぱり台湾人の郷愁をそそって昨年の台湾アカデミー賞、金馬奨を制覇した。僕らが大好きな台湾と台湾人、そして、のどかな風景とスイーツ。それを丸ごと体感できるのがコレ、『1秒先の彼女』なのだ。

清藤秀人