劇場公開日 2021年1月29日

  • 予告編を見る

「【”阪神淡路大震災時、身命を賭して、被災者の方々の心のケアに尽くした精神科医が居た・・。” 天災が続く、現代日本における被災者のPTSD研究の基礎を築いた稀有な精神科医の物語。】」心の傷を癒すということ 劇場版 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”阪神淡路大震災時、身命を賭して、被災者の方々の心のケアに尽くした精神科医が居た・・。” 天災が続く、現代日本における被災者のPTSD研究の基礎を築いた稀有な精神科医の物語。】

2021年4月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

ー 今作の主人公は、精神科医だった、故、安克昌さんがモデルだそうである。この方は、阪神淡路大震災時の経験を基に、被災者のPTSDの研究に当たられていた。が、志半ばで39歳と言う若さで、癌で世を去られた・・。ー

■感想

・”世に役立つ仕事につけ!”という父親(石橋凌:威厳のある男を演じさせたら、この人。ARBのロック魂は健在。)の反対を押し切り、精神科医になった安和隆(柄本明:淡々とした演技がとても良い。)は、終子(尾野真千子:不安を抱えながらも、夫を支える妻を好演している。)と結婚し、幸せな生活を送っていたが・・、阪神淡路大震災に遭う。
ー 父親の言葉に違和感を持ったのは、私だけではあるまい。精神科医は、ストレスが蔓延する現代社会では非常に大切な役割を持った仕事である。-

・自らも被災者なのに、妻子を実家に戻し、避難所で被災者たちに穏やかに声を掛ける安の姿。
ー 平成天皇もそうであったが、彼が被災者に話しかける時、常に同じ高さの目線で穏やかに語り掛ける姿が、印象的である。ー

・自らが、在日韓国人であることを、幼少期に知り、自分のアイデンティティーを模索しながらも、安の言葉は常に穏やかだ。彼が師として慕う医師(近藤正臣:もはや、名優の域に達している。)への問いかけの時だけは、彼の悩みが窺い知れるが・・。
ー 自分に厳しく、人に優しい方である事が良く分かる。ー

・常に肯定的に物事を考える、安さんの思想。
ー それは、大阪のおばちゃんが言った言葉に対し”その人も、きっと怖いんだよ・・”と言う言葉や、避難所で地震ごっこをして遊ぶ子供達に対し、怒るオトナに対し”子供なりのストレス対応なんですよ・・”と言う言葉など。ー

・安が執筆した本が賞を獲ったと知った時の、病に侵された父親が嬉しそうに表彰状を見つめる姿。
ー 息子は人様の役に立ち仕事をする男になったのだという喜びと、自らの写真を伏せるシーンは自らへの深い反省と、”後は任せた”という意思表示であろう。ー

<阪神淡路大震災後も、日本は様々な自然の脅威 ー地震、津波、激甚化する気象、そしてコロナ禍ー に晒されている。
 このような状況下、安さんのように終始穏やかな表情を保ち、被害者の側に立ち、心のケアが出来る人材は、今後も必要とされるであろう。
 安さんの早逝が惜しまれる。>

<2021年4月4日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU