劇場公開日 2021年6月11日

「刑事ドラマ?」キャラクター caduceusさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5刑事ドラマ?

2021年6月30日
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予告編を観ると、猟奇的殺人を主題としたドラマに見えるが、本編を観ると、刑事ドラマとしての側面を持った作品となっている。
刑事ドラマの部分は、アウトローな刑事役を小栗旬が、その抑え役を中村獅童が演じる。刑事ドラマは、典型的な刑事ドラマのパターンを踏襲していると言っていいかもしれない。
その刑事ドラマの上に、猟奇的殺人を犯していくというドラマが上塗りされ、菅田将暉が演じる漫画家の欲望と、Fukaseが演じる社会から取り残された男の狂気が入り乱れていく。
刑事ドラマは、ややぎこちなく、セリフも、演技も、映像も、どこかで見たことのある、それが展開していく。
一方、菅田将暉とfukaseの演じる猟奇的殺人ドラマは鮮烈だ。漫画のストーリーをなぞって殺人を犯していくという展開は、観る前からわかってはいるが、どちらの方向に向かうか、わからないというスリルとスピード感を生み出している。
終わり方は、続編を作りたいということだろうか。余韻を残したエンディングだ。
漫画家の奥さん役を高畑充希が努め、キャストとしては豪華ということになるのかもしれないが、猟奇的殺人犯の背景を、もう少し描かなければ、ドラマとしては成立しないのではないか。それとも、その部分は続編でやろうとしているのだろうか。
日本の映画は宗教を描けない。また、描いていても、とても貧弱な内容のものばかりだ。
おそらく、刑事ドラマに寄ってしまったのは、Fukase演じる男の背景にある宗教を描ききれなかったからだろう。
四人家族を最も幸福と考える宗教?これは殺人ストーリーの前提を作るためだけにある無意味な設定では?
表面はごまかせても、見ているうちに違和感を感じ、ストーリーの展開は上滑りになっていく。
描かなければいけなかったのは、刑事の生い立ちではない。テーマとなるべき猟奇的殺人犯の生い立ちだ。
人間の内面を描けず、ビジュアルに頼った殺人映画を世に問うことに、何の意味があるのだろうか。
菅田将暉とFukaseの演技力は素晴らしかっただけに、少し残念な作品と言えるかもしれない。

caduceus