劇場公開日 2021年1月22日

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「【紛争、紛争の地】」キル・チーム ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【紛争、紛争の地】

2021年1月25日
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こうした作品を観ていつも感じるのは無力感だ。

たとえ正義感に溢れていようが、支配や武力で優位に立っている場所では、こうした事件は起きる。

証拠がないにもかかわらず、さもあるかのように英米が中心になって始めたイラク戦争も思い出す。

戦争の原因はさまざまだと思うが、軍需産業を巻き込んだ政府と軍とのトライアングルが、自らの利益のために行動することも大きな要因であることは知って欲しい。

まもなく公開になるシャドーディールは、こうした産軍複合体を巡るドキュメンタリーだと思う。

アフガニスタンは、1978年の左翼政権の誕生から、翌年のソ連侵攻、1989年のソ連撤退後も、ソ連が支援する左翼政党とタリバーン・アルカイーダの間で内線・圧政が続いた。

2001年9月11日のアメリカでの大規模テロをきっかけに始まったアメリカのタリバーンへの攻撃による戦争状態は、アメリカなどが支援する政府誕生後も、反政府組織によるテロなどが頻発し、現在も継続中だ。

アレクサンダー大王が東征し、日本人にも馴染みの深いガンダーラがかつて存在、シルクロードの重要な中継地であり、カブールをはじめ美しい都市が多くあったアフガニスタンの人々に、長い間、安寧の日々は訪れていない。

このように書くと、共産主義国家だったソ連の侵攻が、現在も継続する紛争のきっかけだったように考えられがちだが、現代に続く紛争の大きなきっかけが、実は、イギリスの植民地支配だったことは間違いない。

アメリカは、こうした地域を植民地として治めたことはない。
しかし、ソ連のアフガニスタン侵攻に際し、反共の立場からタリバーンに繋がる反政府組織を支援し、ソ連を撤退に追い込んだ。

だが、ソ連撤退後の内戦では、タリバーンのイスラム原理主義的な考え方などへの反発もあり、支援を後退させていく。
そして、こうした支援打ち切りに加え、アメリカの中東政策への不信感が募り、911テロが醸成されていったのだ。

武器をでっち上げ、無実の人を殺害する行為は、数の大小に関わらず、虐殺だ。

こうした行為を許さないと、この作品にあるように裁判を開いて、ディークスのような人間を裁いたことは、ひとつの正義のあり方だと思う。

しかし、冒頭に書いたように、無力感しか残らない。
殺害された人はもとより、巻き込まれたアンドリューや家族も一生苦悩するに違いない。
それに、イラク戦争などは裁きの対象にはならないからだ。

戦争は一旦入ったら抜け出せないループのようだ。

世界の現状や分断を見るにつけ、世界から紛争がなくなることはないように感じてしまう。

アメリカ連邦議会での暴動を見ると、先進民主主義国家でさえ、こんな状態なのかと驚く。

だから、国のリーダーや、リードする政党には見識が求められるし、人々は政治を監視し、自らも律し、学ばなくてはならないのだ。

ワンコ