「正当に進化したリメイク作品だけど、時代に翻弄された感もある一作。」映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0正当に進化したリメイク作品だけど、時代に翻弄された感もある一作。

2022年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本来ならば2021年3月公開予定だった本作。新型コロナウイルスの感染拡大状況を受けて公開を約一年延期、そしてようやく公開にこぎ着けたかと思ったらロシアによるウクライナ侵攻が発生してしまいました。非常に不幸な偶然により、「戦争」をタイトルに関した本作は、図らずしも時代を象徴する作品となってしまいました。

1985年版と本作では、物語の主筋は大きな変更はないものの、いくつかの要素が現代の価値観に合わせてアップデートされています。例えば映画版の定番とも言えるしずかちゃんの入浴シーンは、シーンとしては残ってはいるものの、単なる男性観客のためのサービスショットとして使うのではなく、状況に必然性を持たせるなど、映画版『ドラえもん』が引き継いできた要素をできるだけ残しつつ、価値観の刷新を図るという製作側の努力を垣間見ることができます。

本作でのび太達が救いの手を差延べるピリカ星の大統領、パピは、若いが聡明な統治者である点は旧作と共通しているものの、新たに彼の姉、ピイナが加わることで、パピの葛藤、弱さを過度に情緒的にならず描くことができています。こういった脚色の仕方は、長年『ドラえもん』を制作し続けてきた脚本陣が蓄積してきた知見のたまものでしょう。

悪役のギルモアはずいぶんオーバーアクトだなぁ、と思っていましたが、声優を知って納得。もっと顔芸が細かかったら最高!

yui