劇場公開日 2021年9月10日

  • 予告編を見る

「映画愛に溢れた一本なのは疑いない。」浜の朝日の嘘つきどもと talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0映画愛に溢れた一本なのは疑いない。

2023年5月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

男運はなかったけれど…。否、男運がなかったからこそ、田中先生には、映画があったのかも知れません。映画を見て、あれだけ泣ける(感情移入ができる)のは、素晴らしいことと思います。
終わろうとする自分の命と、いわば引き換えに、かつて通い詰めた(?)朝日座の再建の想いをあさひに託したということなのでしょう。
一方のあさひにとっても、田中先生との約束を果たして朝日座の再建を見届けることは、震災を契機にバラバラになってしまった自分の家族を見つめ直すことだったのだと思います。家族そのものではなかったにしろ、それに代わり得るほどの深い絆を取り結んで来た田中先生に対する想いを実現させることで。
その二つの「想い」の交錯が、本作の基軸になっていたのだと受け止めました。評論子は。

新型コロナウイルス禍もあり、何かと不自由・不安な昨今でしたが、そんな世相でも…否、そんな世相だったからこそ、生活の中に映画というものを取り入れておいてよかったと評論子は改めて思つていました。
本作を見終わって、評論子は。
他の多くのレビュアー諸氏が本作の「映画愛」についてコメントしているのも、おそらくは同じような感慨を本作から受けたからだと、評論子は受け止めました。

佳作であったと思います。

<映画のことば>
映画っていうのは、少しだけ人の心を豊かにしてくれるというか、それは、映画館でしか伝えられないことで。だから、もう少し頑張ってみようかなと。

私が入会している映画サークルで、フィルムの上映で上映会を開いたことがありました。元は映画館だった貸館での開催でしたが、当の貸館でも、その上映会を最後にフィルム映写機を撤去するとのことでした。
その旨の舞台挨拶は、評論子ではなく古株の運営委員がスタッフを代表して行いましたが、その手には、映写機のリールがあったことを、今でも覚えています。
そのリールは、開館以来、スクリーンに向かってどれだけの夢や、希望や、愛憎や、悲しみ、悩みや苦しみや、そして生きることの喜びを紡い来たことかと思うと、万感胸に迫ったことが思い起こされます。
シネコンで上映されても映画は映画なのですが、館主や常連の顔が見えるミニシアターのほうが、この言葉はぴったりと当てはまると、今更ながら思います。評論子は。

talkie