配信開始日 2021年4月15日

「動機なんて、愛なんて、本当は必要ないのかもしれない」彼女 Pegasusさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5動機なんて、愛なんて、本当は必要ないのかもしれない

2021年4月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

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配信前から傑作の予感がプンプン匂ったNetflixオリジナル作品。
他の人の評価を観ていると結構、低めなんだけど個人的には期待通り素晴らしい映画だと思う。
最初の方は、動機とか演出が雑な印象がありイマイチ入り込めなかったけど、後半からはその「雑な部分」を二人の交流を通して問題提起していく。

「同性愛」というテーマを扱う以上、恋愛感情というのは必要不可欠になってくるのが普通。しかし、この映画を観ていたら「愛なんてどうでもいいじゃん」と思えてしまった。今泉力哉じゃないけど「愛がなんだ」と。
恋人でも友達でも家族でもない。でも他人でもない何か。
そこに恋愛感情はあるのかもしれないし、無いのかもしれない。同情かもしれないし、はたまた母性かもしれない。でも彼女達の間にはとても繊細で微妙な「何か」が存在する。
そもそも感情というのは人間が勝手に名前をつけただけであって、それが全てではない。
そんな視覚的にも文字にも表せない感情を浮き彫りにしたのがこの映画。

その曖昧な感情の狭間で揺れ動く姿を演じた水原希子とさとうほなみは、邦画でも稀にみる体現。
ちょいとクサイ台詞も自然に聞こえるし2人の距離感が絶妙なバランスで調和している。
濡れ場では度肝を抜かれるので注目されがちだが、日常(逃避行なので非日常?)での佇まいも表現力に満ちている。
身も心も全開でさらけ出しているんだけど、それを殻で包んでいるみたいな。この2人はもっと活躍して欲しいな。

経験豊富な廣木隆一監督の情緒的な撮り方も相まって「名作の雰囲気」が漂う素晴らしい作品です。選曲もこれまた絶妙で儚い雰囲気を昇華させていた。

内容も撮影も編集も音楽も、かなり癖が強いので、見る人の人生観や価値観によって評価が大きく分かれてくると思う。
だから手放しには言えないけど自分はやはり傑作だと思うし、名作にも成りうると思う。
予算面でも内容的にもNetflixだからこそ実現出来たのだろうけど、この雰囲気は映画館で味わいたかったなぁ〜

Pegasus