劇場公開日 2021年3月12日

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「邦画ミュージカルへのアレルギー緩和に貢献するか」すくってごらん 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5邦画ミュージカルへのアレルギー緩和に貢献するか

2021年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

幸せ

見たところ宣伝方針としては「ミュージカル」と呼ぶのを避けているようで、“ポップエンターテインメント”と表現しているが、予告編を見てもミュージカルのスタイルを採用しているのは明白だ。日本映画とミュージカルには食べ合わせの悪さのようなものがあるのも確かで、欧米のミュージカル映画やインド映画の歌と踊りのシーンは楽しめるのに、邦画ミュージカルには居心地の悪さを感じてしまう人も多いのではないか。

ただし本作には、そうした邦画ミュージカルへの苦手意識やアレルギーに配慮した工夫も見られる。いくつかの場面で楽器弾き語りのスタイルにした点も、シリアスな演技をしていた日本人俳優が唐突に歌い踊り出す時に覚えがちな違和感を緩和するのに貢献している(当然「ラ・ラ・ランド」も参考にしただろう)。女性の着物姿や水の中の金魚をとらえる映像もポップな感覚で美しく仕上げられており、若い世代や外国人にも受けそうだ。

1984年生まれ、2015年公開作「ボクは坊さん。」で劇場用長編デビューした真壁幸紀監督が、歌舞伎俳優の尾上松也、ももクロの百田夏菜子という境界を超えて活躍する2人を起用し、若手ながら難しいジャンルに果敢に挑戦した点に敬意を表したい。

高森 郁哉