デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング

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デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング

解説

香港ポップス界のスーパースター、デニス・ホーが、アーティストから民主活動家へと変貌していく様を長期密着取材で追ったドキュメンタリー。2014年、警官隊の催涙弾に対抗し、雨傘を持った若者たちが街を占拠したことから「雨傘運動」と呼ばれる香港の民主化デモ運動に、香港を代表するスター、デニス・ホーの姿があった。同性愛を公表する彼女は、この雨傘運動でキャリアの岐路に立たされていた。彼女は中心街を占拠した学生たちを支持したことにより逮捕され、中国のブラックリストに入ってしまう。スポンサーが次第に離れていき、公演を開催することが出来なくなった彼女は、自らのキャリアを再構築するため、第二の故郷であるモントリオールへと向かう。

2020年製作/83分/G/アメリカ
原題:Denise Ho: Becoming the Song
配給:太秦
劇場公開日:2021年6月5日

スタッフ・キャスト

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(C)Aquarian Works, LLC

映画レビュー

5.0どう生きたいのかと観客に問う映画

2021年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

デニス・ホーは本当に格好いい人だと思う。生き様が格好いい。香港の自由のために、一個人としてデモの最前線に立ち、武装警官と衝突を避けるために言葉を尽くす。催涙弾の飛び交う中、一般市民と行動を共にする。国連や米国議会でもスピーチし、歌の力で若者に勇気を与える。中国本土での活動を禁じられ、収入の9割を失っても彼女は活動を止めない。彼女の行動動機は損得を超えた内発性にあるのだ。
有名人が政治的な発言や行動することの重要さを説くような映画ではない。そんなことをこの映画は強制しない。むしろ、自分で考え、自分で自由に選ぶことの重要さを描いた作品だと言える。彼女の行動は誰にも強制されていないし、誰かに望まれたからやっているのでもない(むろん彼女は多くの人に支持されているのだが)。デビュー曲「千の私」の歌詞が彼女の生き方を象徴している。「たとえ私が死んでも、後に続く者がいるだろう」あなたはどう生きたいのか、とこの映画は見る人に訴えている。

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杉本穂高

4.0押し潰されていく抗う民の声

2022年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今から何年か前。返還前の香港には何度も何度も遊びに行きました。さまざまな顔を持った街の風景やバイタリティ豊かな現地の人々。西洋と東洋の融合を感じる・・・どこの国でもない「香港」が大好きでした。返還式典を現地で見てから何年経ったのだろうか?あの時は予想もしなかったまさかの現実に諦めにも似たため息がとめどなく出てきます。

本作を見るまでデニス・ホーさんを知りませんでしたが、本人の人生や生き様自体が香港そのものなのではなかろうか?と思いました。どんどん失っていく歌声、言葉、住む場所、思想、思考・・・自由。香港が別の土地になっていくように、彼女たちは塗り替えることを強いられていきます。色を失っていくということはこのことか。

デニス・ホー自身がポップスターで活動家で性的マイノリティ・・・など稀なパーソナリティであるところが、類を見ない国、香港と重なります。重ねて描いている点が秀逸であり、彼女の希望、悩み、失望などなどが香港のそれに見えます。そして、長期的・大局的視点で希望を捨てない姿に香港もそうあってほしいなとも思いますが・・・ショッキングなデモの映像がショッキングすぎますし、圧政にしか見えない国家権力の横暴さに無力感しかないです。

200万人(香港の人口750万人)を動員しているデモなのに、民意を無視するし約束を反故にするって・・・・。民意ってなんなんだろう?国家ってなんなんだろう?民あっての国なんて・・・嘘っぱちだと思ってしまいます。この映像を鵜呑みにすれば(妙な操作が施されている映像ではないと思いますが)アジアの某大国の所業に眉を細めざるを得ません。某国には都合があるのでしょうが民を蔑ろにするその様は侵略にしか見えません。

本作は中国、香港で上映禁止だそうで・・・。そりゃぁそうでしょう。日本の配給会社はリスクはあるが上映に踏み切ったとのことでした。本作を観れたことは知れたことはよかったです。国家の横暴は日本人もいつかは味わうような気がしてなりません。そうならないように何をするべきか、考えることに無駄はないと思います。

=====
本レビューは昨年の記載忘れです。
2021年末、デニス・ホーさんの逮捕の報道、香港の一方的な選挙の報道などで、より無力感を覚えました。世界はどうなっちゃうんだろう・・・・
=====

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バリカタ

4.0【”どうかこの歌が、彼らに届くように・・”2021年の香港の現況を見ると、苦い想いが残るドキュメンタリー作品。だが、2019年までの香港民主主義のために、大国と闘った民衆の記録として価値ある作品。】

2021年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

ー 前半は、デニス・ホーさんがポップス歌手を目指す姿と民主主義思想が彼女の中で形成されて行く過程を、描いている。
  後半は、1997年に香港が英国から中国に返還された後、大国からの容赦ない”政治的取り込み”に対する民衆の激しい抵抗と、その中での彼女の姿が描かれる。ー

◆感想
 ・デニス・ホーさんのご両親(特に父親)の、子供を育てる思想が素晴しい。(というか、当たり前の事を仰っているのだが、英国統治下の香港でも、政治思想的には不自由だったらしいことが語られる。)
 一家でカナダ・モントリオールに移住し、デニス・ホーさんは彼の地で、民主主義思想の大切さを身体で覚える。(余りシッカリとは描かれないが・・。)
 又、彼女が尊敬、崇拝(に近い)した故、アニタ・ムイさんに憧れ、歌手を目指す姿も描かれる。
 ー 前半は、一人の若き女性が成長する姿を捉えているが、やや粗い・・。ー

 ・デニス・ホーさんは歌謡コンテストで優勝し、一人香港に居住するも、仕事は殆どなく、漸く3年後にアニタ・ムイさんの弟子になる。が、アニタさんは40歳で早逝し、彼女は本格的に自分の道を歩み始め、中国でもポップスターになるが・・。
 ー この辺りで、ドキュメンタリーの軸は、一気に香港の反中国政治運動を映し出して行く。やや、構成が粗い気がするが、鑑賞続行。ー

 ・雨傘運動の盛り上がりと、衰退の描き方は、それまで知識と、僅かなメディア映像でしか知らなかったので、臨場感を持って鑑賞出来た。
 そして、彼女が”ポップスターの地位を捨て(ざるを得なかった・・。)”デモの先頭に立ち、警官達に”民主的に話し合おう”と呼びかける姿や、強制連行される姿も。
 ー それにしても、中国を統べる男の、香港に対する政治的スタンスの取り方の巧さには悔しいが、舌を巻く。
   雨傘運動の際も、民衆にやらせるだけやらせ(三か月のデモ。対応するのは当たり前だが、香港警察。)矛先を、キャリー・ラム香港特別行政区行政長官に向けさせ、民衆を徐々に”もう駄目だ、大国に逆らっても無駄だ・・、”と”諦観”に持ち込むやり方。
   キャリー・ラム香港特別行政区行政長官の後ろには、当然、”全人代”が巨岩の様に居るので、殆どの香港市民も諦めざるを得ない・・、という訳だ。
   そして、学生運動家黄之鋒さんや周庭さんを、見せしめのように獄に繋ぎ、一方ではひっそりと、民主主義支援をする弁護士や、知識人を拘束するのだ。
   ”真綿で首を絞める”と言う言葉は、現代のプーさんが統べる国が、香港を取り込む手段に見事に当て嵌る、と私は思う。ー

 ・今作では、2019年までのデニス・ホーさんが、国連で中国の行いを流暢な英語で批判し、世界に助力を求める姿が、屡映し出される。
 ー だが、その後、香港で到頭、稀代の悪法”香港国家安全維持法”(何が、国家安全維持だ!)が制定され、上述したように周庭さん達は、維持法違反で獄に繋がれるのである。ー

<デニス・ホーさんの、後年政治的思想を帯びるようになった歌を全人代を統べる男が聴くことはあるのだろうか・・。>

■数年前、驚愕した事。
 ・中国の工場に出張で行った時に、現地採用の若者と話していたら、彼らの殆んどは天安門事件を知らなかった(もしくは、知らないフリをしていた)事である。
 彼の国の言論統制が半端ない事は経験していたが、
  この作品でも映されていたが”オイオイ全世界が、戦車の前に独りで立ち向かった英雄の姿を見ているんだぞ・・”と驚愕したものだ。
 人民を粗末にする国は、滅びるのが歴史の常だが、プーさんの国は、今のところ盤石である・・。

<2021年8月22日 刈谷日劇にて鑑賞>

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NOBU

4.0外の世界を知るからこそ語れる『自由』

2021年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この映画を観て、改めて海の向こうの大国がめちゃくちゃ怖くなりました。
潤沢な金と(恐らくはその潤沢な金で他国から購入した)武器、国家に従うことを当然のこととして生まれながらに教育されてきた人々。
ほん怖。
まだ日本人で良かった。

個人的な感想ですが、この映画は一見していちアーティストの生い立ちをクローズアップする…と見せかけて、この映画の主題である『自由な香港人』のいち題材としてデニス・ホーという人物を選んでいるように感じました。
香港生まれカナダ育ち、メインの言語は(恐らく)英語、各賞総なめの歌手兼ヨーロッパのブランド企業も目をつける美貌の持ち主、そして同性愛者。
まさに本土の人達にとっては宇宙人みたいなタイプだと思います。

正直、香港で民主化デモが起こっていなくても、いずれ彼女のようなタイプは弾圧されていたんじゃないかと。
ポスト・アニタ・ムイの地位を捨てて自分の言葉で話すようになった彼女は、怖いものなんて何もないというように感じました。
ただそれは、統制を取りたい人間達にとってはただの脅威であるはず。

なんかこれっておかしくない?

そう思う人がもっとたくさんいたのなら。
他の本土の人々も、彼女と同じように自由を知る人間達であったのなら。
恐らくは、彼女が排除されるようなこともなく、香港の歴史も変わっていたんじゃないでしょうか。

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BONNA
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