劇場公開日 2021年1月30日

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「オスは自己犠牲の生き物なのか・・・な?」写真の女 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5オスは自己犠牲の生き物なのか・・・な?

2021年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

予告編を観て、気になって気になって鑑賞。

地味なんですが主人公のセリフ面での演出や意味深(に見える)な演出などが多く、「んー?」と考えながら観てました。当初の予想を裏切ってなかなか興味深い作品でした。

承認欲求が高い女性二名を描いています。
「見た目を気にする人」と「見た目を作る人」と言う登場人物。
またこの「見た目を作る人」もそもそも表面的な美しさしか興味がなさそうな感じからの変化が面白いです。
<見た目=写真>、<見た目を作る人=写真屋(写真加工込み)>という置き方が良いですね。

承認欲求の満たせ方が2通り出てきます。
1つのケースは(メインじゃない方)は緩急の「緩」パートになっており、クスリとしつつメインパートの良い対比となってます。
もう一つのケースは、本作のメインテーマを語っていると思いますが、女性と男性の関係性により得られる承認が声高らかに描かれています。これは監督さんの想い・主張なのかな?

表面的な美しさや承認、また承認を得るために自分を見失うのではなく、たった一人でも人間として受け入れてくれる人が一番だよ。。。とでも言っているかのようでした。
そのあたりの描き方、特に写真屋さん(械)の心情の変化がよく描けていたかな?って思います。
まぁわかりやすくしている感はありますが、女性を被写体として「綺麗にする(撮る)」ことにしか興味がなかったのに、そこの歯車がおかしくなっていく感じが良いです。
まさに無機質な機械(カメラ)を通してしか生物に触れられなかった見た目を作る人が、皮膚の下い流れる物を体感し、頭からお湯をかぶり、写っていたことを受け入れることを決心する(ように見える)シーンは好きですね。目覚めるシーンですから。

ラストのシーンも前振りが効いていますから、なかなか良い終わり方です。
23時は音楽がならないはずなのに、楽しげに時間を過ごす映像。
それは登場人物たちが何かを手に入れた証なんだなぁと思いました。

あと、なんで冒頭からイタリアっぽいんだろう?って思ってました。
なんとなくシチリア(勝手なイメージ)にいそうなダンディな出立ち、ピザやトマトが食卓に並ぶし。
なんでなんだろー?なんでなんだろー?って思ってましたが、インターネットでちょっと調べたら

「イタリアではレディファーストのことをプリマドンナと言って、女性のためならどんな時も男性は自己犠牲を払うべしという考え方が当たり前に浸透している。」

とのこと。
なるほどーーー!そっかそーいう意味合いか。

あー、だから、バレエやってるのか。
あー、だから、あの昆虫を比喩として使うのか。
あー、だから、綺麗にするために骨を折るのか。、、、、って。

と、本作の底辺に流れるものに合点が行きました。(あくまで私見です)

なかなかいろんな「そー言うことかー」な部分が散りばめられ、お話としてもしっかり作られている作品だと思いました。ただ、比喩的な表現がやたら多すぎるかなぁ?って。
もっとストレートに伝えるような部分も多くてもよかったのでは?って思いました。
そうすれば比喩部分も映えたのでは?

良作でした。

バリカタ