劇場公開日 2020年11月27日

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「男の悲哀を演じて森山未來、キャリアハイ!」アンダードッグ 後編 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0男の悲哀を演じて森山未來、キャリアハイ!

2022年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

感動のボクシング映画(人生の希望と再生の人間ドラマ)
2020年。監督:武正晴 原作・脚本:足立伸。主演:森山未來

アンダードッグの意味は「咬ませ犬」
(思いっきりマイナーな秀作です)
主人公の末永晃(アキラ)は、かつてプロボクシングで日本チャンピオン戦を戦い負けたプロボクサー。
その試合は今でも語り継がれる名勝負だった。
しかし負けは負け。買った男は人生の勝者。負けた男は敗者。
晃はそれから10年。ボクシングを捨てきれずにリングに上り、ノックアウトされてリンクに這いつくばっている。

そんな晃の人生と周りの人々を追ったドラマだ。
周囲のほとんどは負け犬・・・人生の敗者たち。
晃は一流の強力なパンチを持っているのに、根っからの弱虫の意気地なしだ。
現実生活では気が小さく、虫も殺せず、他人を殴ったことなんか一度もありゃしない。
《晃は何故、パンチ・・ボクシング・・に拘るのか?》
答えは、弱いからだと思う・・・
妻には愛想をつかされ、定職もなく、年々、年老いてパンチのキレも衰える・・・
晃の弱さと優柔不断は、人生をどよーんと暗くしている。

あの全日本チャンピオンシップ・・・唯一輝いた記憶・・・
それが支えであるとともに晃を縛る足枷になっているのだ。

北村匠海(大村龍太)は晃を尊敬している青年。
施設育ちの苦労人の元不良。
施設で知り合った妻に子供が生まれる。
人生で初めて愛おしいと思う日々。
施設で反抗的な龍太をパンチでお見舞いした晃をいつか倒そうと、ボクサーを目指す。
「アンダードッグ」は前・後編、4時間半という長尺です。
まったく長さを感じない。面白いから・・決して暗すぎないから。

前編は晃がボクシングにしがみついて、出ると負けの試合をする日常。
デルヘル嬢の送迎のアルバイトやサウナの掃除で生計を立て、デルヘル嬢の子持ちの新人と、腐れ縁の出来る様子などが描かれる。

もう一人の主要人物は勝地涼が扮するお笑い芸人の宮本瞬。
大物俳優(風間杜夫)の息子で二世タレントだが、才能のないヘタレ。
そんな瞬と晃がテレビの企画で戦うことになる。
前編のクライマックスは森山未來と勝地涼の本気のボクシング試合がメインになる。
これがロッキー顔負けの激しさと、お笑い芸人と晃の崖っぷち2人の、命懸けの意地の張り合いとなる。

後編はびっくりの衝撃的な展開をする。
大村龍太(北村匠海)の不良時代の悪行が、我が身に跳ね返ってくるのだ。

森山未來のストイックな肉体(彼は舞踏家でもあり、削ぎ落とした肉体が雄弁)
北村匠海の若さ、消しても消せない華やかさと、影がある役を得難いの存在感でで演じている。
勝地涼もまた、二世タレントで才能のない男が、運命の重しに押し潰され抗う惨めさが秀逸。
メジャーの映画ではない、マイナーな映画の底力と良さを感じました。
こういう映画があるから、メジャーの映画が成り立つし引き立つのだと、
生意気にも思いました。

過去鑑賞(2021/05/26)

琥珀糖
caduceusさんのコメント
2023年3月21日

いやぁ、森山未來はボクサー上がりかと思いました。なかなかでしたね。

caduceus
CBさんのコメント
2022年7月15日

> 不良時代の悪行が、我が身に跳ね返ってくる
ですよねー

俺、この映画めちゃくちゃ好きなんです。ボクシング映画好きなんですが、もう一つの傑作「百円の恋」の足立さんが脚本ってことで、楽しみに出かけて、前後編ちゃんとたっぷり楽しめました!

CB
ごーるどとまとさんのコメント
2022年7月3日

初めまして。「ナイトメア・アリー」へのコメントありがとうございます。
「アンダードッグ」は劇場で2回ずつ観ました。特に後編がめちゃめちゃ良いですよね!
2020年のマイベスト1がアンダードッグ、
2021年のマイベスト1がファーザー、2位がヤクザと家族でした。
割と好みが似ているのかなぁ、と勝手に思いました。
今後ともよろしくお願いします。

ごーるどとまと