劇場公開日 2020年11月13日

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「「日本人の一番いやな部分」と対峙する必然性」日本沈没2020 劇場編集版 シズマヌキボウ コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「日本人の一番いやな部分」と対峙する必然性

2020年11月18日
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アプローチが違うのに、しっかり『日本沈没』でした。
まずは地震、沈む日本に対する恐怖をしっかり描いていた。
怖いくらいに。
阪神淡路と311を経験した私らには、導入部にはトラウマを刺激される部分すらあり。
音楽で異様に煽ったりせず、効果音で自然の脅威を表現していたのも怖さを倍増させていました。

元々の小説は「高度経済成長」に翳りが見え、終焉を迎えた時に、どうやって生きるか、日本人とはどういうものなのか、という命題に挑んだ作品でした。
土地や地位、所属などに固執する性質を持ち、またそれらに守られている日本人に、「土地を失う」という強烈なシチュエーションをぶつけて、日本民族のアイデンティティを浮き彫りにしつつ、初めて殻から出て「世界」に向き合った中で、どう生き残っていくかを描くのが小説『日本沈没』の真髄だったと思います。

だから原作小説にも、映画にも「日本人の一番いやな部分」と対峙する部分があったわけで(同じくらいいい部分の表現もあるし)。
その醜い日本人像は、昨今のSNSに蔓延する、歴史や科学を知ろうとせず、自分だけが正しいと信じ、ヘイト垂れ流しの人々にとっては、自分たちの醜悪な部分を強調して見せられる、痛いものであったろうなぁ。

劇場用に改めて作り直したという音楽は、ラストの主人公のモノローグにかぶせて流れるあたりで、希望を感じさせる上手いつくりになっていました。

と、全面的に褒めているようですが、ややマイナスな部分も。
作画のばらつきが目立ちました。
脚本的な粗も目立つ。
特に、物語を進めるためとはいえ、KAITOがチートキャラすぎて、ちと冷めた部分もあり。
新興宗教ネタなど、面白いかどうか客を選ぶネタ選びではあるし。
TVドラマ版や、昔の映画版のように、ジェットコースター的展開では無い分、作品にのめり込みにくい部分もある。
全10話をカットしながらも、「繋いだ感」がぬぐえなく、暗転、ぶつ切りがやたら増え、全体の中での盛り上がりポイントが希薄になっちゃった感は否めません。

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コージィ日本犬