劇場公開日 2020年11月14日

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「まず、はじまってすぐの高橋幸宏さんのドラムがすんごい。1音1音に意味があるドラム。」音響ハウス Melody-Go-Round kizkizさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0まず、はじまってすぐの高橋幸宏さんのドラムがすんごい。1音1音に意味があるドラム。

2020年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

東京の名物レコーディング・スタジオのドキュメンタリー映画。
関係者のインタビュー & 新曲のレコーディング風景を軸にした内容。
アーティストやジャンルの歴史ではなくスタジオに焦点をあてることで他の音楽映画にはない面白さがある。

録音技術より場所と巡り会いの話。つまりはスタジオの話です。ここは人を選ぶかもしれない。

主題歌の録音シーンはうおっ!と興奮する演奏の連続。これが一流か。
エンジニア飯尾芳史さんと佐橋佳幸さんが演奏を聴くたび嬉しそうにリアクションするのがステキ。

まず、はじまってすぐの高橋幸宏さんのドラムがすんごい。1音1音に意味があるドラム。聴いた瞬間に心臓が止まった。
あれで“音響ハウスは音がいい”という大前提を短的に語い、映画の説得力が確固たるものになってる。
素晴らしい!

坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春、大貫妙子、高橋幸宏、葉加瀬太郎、スカパラ初代メンバー……など色んな人が故郷の話をするように楽しそうに昔話を話す。
でも音を語るとき、演奏するときに一瞬だけものすごくアーティストの顔になるのが印象的。

松任谷夫妻のトークが意外と微妙;
その直後の葉加瀬太郎がめちゃくちゃ面白いので余計にそう感じてしまいました。

葉加瀬さんの演奏者としての凄さにも気づく。一度は生で聴いてみたいなぁ。
映画全体で演奏の質がほんと高いのです。80年代の猛者達の最高級の演奏。

大貫妙子さんがスタジオに入ってからの緊張感も印象的。みなさんの表情が変わる。これもまた現場の一つの顔か。
HANAさんへのボーカル・ディレクションでブースから歌う例が当然のごとく上手くて、この人が歌えばええやんとまで思ってしまった笑

最後に良い音とは?の質問に各者が答えていく。
佐野元春さんがインタビュアーの目をしっかり見て短的にピシャリと言ったのが素敵だった。

”いま”の録音シーンはワクワクするし、面白い証言も多数。ただ当時の”映像”がまったくなくて言葉だけで語られるのがすこし残念。
アナログ録音とデジタル録音の違いを話す人も多いんだけど、せっかくなら映像(音)としての比較を聞きたかったなぁ。

80年代の音楽シーンの空気も伝わってくる。
CM音楽が重要な意味を持ってたのが自分としては新鮮で。

大学で音楽社会学を学んでたときも、教授がCM音楽について色々と語って意味がようやく理解できたかも。
この頃の感覚だったんだな。

普段見れない現場や空気を覗き見れる。
なにより新曲の録音過程のワクワクがたまらない!
音楽好きにはオススメしたい一作。

HPに載ってる色んなアーティスト/関係者からのコメントがまたステキ。
特に清水ミチコさんの「ミュージシャンの才能に、磁場が加わると、とんでもない作品が誕生するという魔法。」
なるほど磁場か。

kizkiz