劇場公開日 2020年11月14日

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「ケミストリー」音響ハウス Melody-Go-Round Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ケミストリー

2020年11月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

予告編で、坂本龍一が「音響ハウスが残っているのは、贅沢なことなんです」と語っている。
この映画では、いろんな人のいろんな意見が出てくるし、ミュージシャンによって利用法は様々らしいのだが、“特別な場所がある”ことへの賞賛という点では共通していた。
このアナログ時代から続くスタジオを扱った映画を見終えて、逆に浮彫になるのは、最近は自宅で打ち込みで作るなど、音楽作りが様変わりしているらしいことだった。

音響の良い広い空間があって、そこに人が集まり、“ケミストリー(化学反応)”が起きて、その時その場所でしか生まれ得なかったサウンドが録音される。
客の前でやる一過性のライブ演奏とはまた異なる、ラボにおける“化学実験”である。
好むと好まざるとにかかわらず、昔はそうせざるを得なかったのであり、一長一短あるだろうが、昔の音楽の方がどこか危うい分、“豊か”であると感じるのは自分だけだろうか?

そういう現象は、音楽だけではない。今でも映画作りなどはまさにそうであろうし、黒澤明は「一人で書くと一面的になる」と脚本も共同で書いたという。
コロナ禍で「リモートワーク」がもてはやされるが、物事はそう簡単ではないのである。
(ちなみに、“ケミストリー”は、バスケのNBAでは頻繁に使われる言葉である。)

それにしても、座席位置にもよると思うが、今日初めて気付いて、びっくり仰天したことがある。
「ユーロスペース」の音響があんなにも良いなんて(笑)。

Imperator