劇場公開日 2020年10月10日

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「超法規的措置に振り回され続けた司法当局と被告人たち」わたしは金正男を殺してない h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0超法規的措置に振り回され続けた司法当局と被告人たち

2020年10月15日
iPhoneアプリから投稿

残念ながらマーレーシアには公平な司法制度など存在しないことを認識させられた。

事件後からマレーシア政府は、友好国である北朝鮮(事件後、急速に両国関係は悪化したものの、いまは関係修復した模様)側の容疑者の早期国外退去を許す「超法規的措置」に踏み切る。

事件の首謀者グループを裁く機会を失った当局側は、実行犯にターゲットを絞ったのは当然の帰結。裁判の論点は2人に殺害の意図があったか否かの一点。ただ、有罪、処刑ありきの裁判の進展に絶望感が漂う。

第三者が真実にアプローチすることは本件においても相当困難な状況ではあるが、事件の状況や本人たちの供述をみると、二人にとても殺害の意図があったようにはみえない。日本だと、過失致死の罪に問われそうだが、マレーシアの法律はかなり様子が違う様子。

その後の裁判の顛末ついても、またしても関係者は超法規的措置に振り回される。被告の二人にとってはハッピーな結果であるが、プロセスだけをみると何ともやりきれない気持ちにさせられる。帰国後の二人の様子からも複雑な思いが読み取られる。

もし被告が日本人だったら、日本政府はどのような対応をとるのだろうか。
また舞台がマレーシアではなく、中国のような大国でも同じ超法規的措置は許されるのか。
ふといろいろ考えるとおそろしい…。

作品の論点は裁判の行方のようでいて、本質的には国家のパワーバランス、外交交渉のリアルがメインテーマなのか。

atsushi