劇場公開日 2021年1月8日

「スマホを踏み絵にして試される仲間の絆」おとなの事情 スマホをのぞいたら みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0スマホを踏み絵にして試される仲間の絆

2022年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

ブラックコメディの領域では収まり切れない、なかなかの怪作である。スマホという現代的で身近なものを利用した個人情報暴露ゲームで巻き起こる騒動を面白可笑しく描きながら、最終的には、苦難を乗り越えた仲間の強い絆に物語を導いて結実させる展開が斬新である。さすがに世界18か国でリメイクされただけのことのあると納得させられる。

本作の舞台は、皆既月食の夜。気の合った七人(三組の夫婦と一人の独身男性)が集うパーティー会場。彼らは共通の体験をした仲間であり、毎年パーティーを開いて交流を深めていた。出席者の一人の提案で、各人のスマホの着信電話、メールを公開するゲームを始める。着信があるたびに、各人の秘密が明らかになり、楽しいはずのパーティーは愛憎渦巻く修羅場となっていくのだが・・・。

全編、ほぼパーティー会場だけの密室劇、七人の会話劇である。七人の演技力が問われるのだが、百戦錬磨の演者揃いであり、七人の演者の丁々発止のやり取り、本音トークが面白い。特に、着信音が鳴った時の七人の表情、仕草が絶品である。トレンディドラマで活躍していた常盤貴子の演技巧者振りが光る。当時と変わらない、衰え知らずの美貌で、歳を重ねた女性の強かさを豪快に演じている。独身男性役の東山紀之も今までのイメージを払拭して心優しい3枚目役を熱演している。

ドタバタ愛憎劇で終始するとなると、落しどころはどうなるのかと心配していたら、途中から、物語は、ドタバタ愛憎劇の顛末を置き去りにして、大きく軌道修正していく。七人の絆にフォーカスしていく。

展開がかなり強引ではあるが、ここが本作のメッセージだと感じた。七人は、厳しい苦難を体験して乗り越えた戦友だった。七人の絆は緩むことはあっても切れることはない。皆既月食を見ている時の七人の台詞から七人の行く末が示唆されている。

本作は、スマホを踏み絵にして、七人の仲間たちの絆の強さを浮き彫りにした怪作である。

みかずき