劇場公開日 2020年8月28日

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「映画音響の進化の過程を映画館で体感するドキュメンタリー」ようこそ映画音響の世界へ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画音響の進化の過程を映画館で体感するドキュメンタリー

2020年9月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

1927年に公開された世界初のトーキー『ジャズシンガー』から始まる映画音響の歴史を膨大な映像と音の断片、既存フォーマットに満足出来ずより多彩な音響を求めた映画史上の巨匠達、その飽くなき要望を満たして未開の世界を切り開いた映画音響のレジェンド達の発言を綴ったドキュメンタリー。

オーソン・ウェルズ、コッポラ、ルーカス、スピルバーグ、リンチ、ノーラン・・・映画史を塗り替えた巨匠達が音響に求めたものが、幼い頃から音に魅せられた若者達を駆り立て、無数に繰り返された試行錯誤から見出された新たな音が映画史に新たなチャプターを追加していく様を捉え、その効果を実際に体験させてくれる作品。正直ベン・バート、ウォルター・マーチ、ゲイリー・ライドストロームといったレジェンド達の名前すら知らなかった見識のなさを恥じるとともに、彼ら自身と彼らから影響を受けたアーティスト達が実現した革新的な音響表現が映画に及ぼした圧倒的な効果を目の当たりに出来た喜びに感謝し、今まで当たり前のように享受してきた映画の世界の深遠さに改めて感動しました。

これこそ実際にスクリーンで観なければその魅力を半分も堪能出来ない特殊な作品なので、是非上映館へ足を運んでもらいたいです。最初から最後まで耳からウロコが落ちまくるのですが、特に意外だったのがバーブラ・ストライザンドが音響表現の発展に大きく寄与していたこと。音響というと派手な戦争映画やSF大作を連想しがちですが、映画史と音楽史が地続きであることもまた非常に重要であることが解ったのも大きな収穫でした。

ちなみに本作の製作会社の名前がAin’t Heard Nothin’ Yet Corp.という見覚えのないものだったのが冒頭から気になったのですが、作品中に挿入された『ジャズシンガー』のワンシーンにその由来を見つけ、音にこだわる人達の圧倒的なネーミングセンスに驚嘆しました。

よね