配信開始日 2020年9月30日

「妹探偵、誕生!」エノーラ・ホームズの事件簿 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5妹探偵、誕生!

2022年11月13日
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鑑賞方法:VOD

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シャーロック・ホームズに妹がいた…!?
…という設定で人気のYA小説のオリジナルキャラ。
そもそもアーサー・コナン・ドイルの原作小説では、シャーロックの家族については両親には触れられていないようで、兄マイクロフトのみ。無論妹など本来は存在しない。
日本で言ったら、金田一耕助に孫がいた…みたいなもん。
でも、このユニークな発想が楽しい。
金田一耕助の孫が“じっちゃんの名にかけて”祖父譲りの推理力を持つのと同様、シャーロック・ホームズの妹も兄譲りの推理力で大活躍!

幼い頃から二人の兄、マイクロフトとシャーロックとは離れて暮らしていた年の離れた妹、エノーラ・ホームズ。
母ユードリアと二人暮らし。(改めて言うが、この母ユードリアもオリジナルキャラ)
イギリス郊外の屋敷で、母と娘、慎ましく…とは程遠い。
母から受ける“スーパー英才教育”。たくさんの読書で知識を増やし、化学実験や武術訓練も。中でも母の“得意科目”はアナグラム。
さすがは名探偵の母!(オリジナルキャラだけど)
エノーラも利発的で好奇心旺盛でお転婆な性格。
そんなある日…

突如母が失踪。
連絡し、兄二人と久々の再会。
ずっと離れて暮らしていたので、迎えに行った時もスルー…。でも何より落胆したのは、期待していたお兄様とはまるで違った。
二人共、失踪した母の事も久々に再会した妹にも関心示さず。厳格なマイクロフトに至っては厄介者払いするかのように花嫁学校に入れようとする。シャーロックも多少は気遣ってくれるものの、助けてはくれない。
兄たちの言いなりにはならない!
母が遺した暗号をアナグラムで解読し、ロンドンに居るらしい事を突き止め、母を探してくれない兄たちをこっそり出し抜き(シャーロックは見抜いていたようだけど)、私がお母様を探し出す。
エノーラ・ホームズ最初の事件は、消えた母を探せ…?
これが発端となって、本当の大事件に巻き込まれる事に…!

とある駅で、ご婦人が息子を探しているよう。
個室でばったり、その息子と遭遇。バジルウェザー侯テュークスベリー子爵。
殺し屋に命を狙われている彼を助ける。
何故彼は命を狙われる…?
ロンドンに着くと、街は法改正の話題で持ちきり。
子爵と別れ、改めて母探し。母の知人に会い、記憶を頼りに、驚くべき事態に辿り着く。母は一体、何をしようとしているのか…?
殺し屋に奇襲されるも、武術で命からがら逃げ切る。
子爵と再会。彼を助ける事を決める。
母探しと子爵助け。接点など無いと思っていたが…。そこには、ある陰謀が…!

YA小説が原作なので、本格ミステリーを期待するとちと肩透かし。
勿論ミステリー要素やエノーラの推理も散りばめられているが、アップテンポでライト感覚の娯楽作。
ミステリー&サスペンス、少女の奮闘冒険、ユーモア、仄かなロマンス、母娘ドラマ…それらが小刻みよくブレンドされている。
本当に楽しい~!
その魅力に素晴らしく貢献したのは、ミリー・ボビー・ブラウンに尽きるだろう。
とにかく彼女に魅せられる。
自立精神に溢れ、行動力抜群。母からのスーパー英才教育と兄譲りの推理力で頭脳も明晰。
ハツラツ、元気いっぱい、イキイキとした性格に加え、アクションも披露。ファイティング・ポーズが勇ましい。
ボーイッシュな服装から未亡人姿、嫌っていたコルセットを着けた麗しいドレス姿…“ファッション・ショー”も魅せてくれる。
某俺ちゃんヒーローよろしく、劇中こちらに話しかけてくるのが、ユニークでキュート!
ミリーの出世作の『ストレンジャー・シングス』は見ておらず、ハリウッド版ゴジラに出ていた事ぐらいしか知らないが、間違いなく彼女の代表作!

妹主役とは言え、名探偵の兄も勿論登場。ヘンリー・カヴィルが“超人”から名探偵をスマートに演じ、密かに推理力を働かせ、妹の行方を追う。
ロバート・ダウニーJr.版の『シャーロック・ホームズ』では巨漢変人ながらユニークな曲者だったマイクロフトだけど、こちらではかなり嫌味な性格に。マイクロフトって、こんなキャラだったっけ…?
エノーラと行動を共にするテュークスベリー子爵役のルイス・パートリッジは掘り出し物のイケメン。ここら辺やっぱり、YA小説映画らしいね。
出番はそんなに多くないが、母ヘレナ・ボナム=カーターが印象的な好演。変幻自在の名女優だね。
彼女含め、『ハリポタ』キャストも何人か。

テュークスベリーが命を狙われていた理由。
法改正絡み。
不審死した父親に代わり、彼にも投票権が。
父親と彼は賛成派。
反対派の陰謀。
その黒幕は、意外な人物…!

母ユードリアもイギリスの変革と闘っていた。
エノーラへの英才教育はその為のもの。
自力で考え、自力で行動。
女の子主人公故、その成長物語と女性の自立であると同時に、未来ある若者の奮闘と独立独歩の自由精神を背中押し。

“未来は自分次第”。
女性が家庭に入るのを半ば強制されていた時代、それを拒み、私は兄と同じこの道を選んだ。
次なる活躍も楽しみ。そりゃあ続編製作される訳だ。

妹探偵、誕生!

近大