劇場公開日 2021年11月12日

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「トキソプラズマに感染すると猫好きになる…」恋する寄生虫 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0トキソプラズマに感染すると猫好きになる…

2024年5月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

WOWOWの放送にて。

前半は気持ち悪い。
後半は美しい。

フタゴムシを蝶のようなイラストにしたのは、目黒寄生虫館のグッズが最初なのかと思うのだが、寄生虫なのでそんな可愛い姿ではない。ツガイ(といっても雌雄同体)が合体して一体化し、引き離すと死んでしまうことから、ロマンティックに生涯一夫一婦制だと例えられる。
この物語は、そんなフタゴムシをキーアイテムの一つにしている。

タイトルの”寄生虫“は何かを象徴しているのか隠喩なのかだと思っていたので、本当に脳に宿っているムシだとは、驚いた。
社会に適応できない疾患の7割は脳に宿るこの寄生虫によるものだというSFチックな設定で、小松菜奈と林遣都は二人とも寄生虫に侵されている。
難病もののラブストーリーに分類するとすれば、恋人同士がどちらも病に侵されているという、異色の設定だ。
寄生虫は宿主の脳を操って別の宿主と接近させる。宿主どうしが接触すると寄生虫は宿主の中に卵を生み宿主を食い荒らす。やがて宿主は自殺に追い込まれるという。
恋に落ちた二人はキスやセックスをすることができない。そもそも、それが本物の恋なのか、寄生虫に操られただけなのかという葛藤が生じる、ある意味究極のラブストーリーなのだ。

寄生虫の治療に関する設定は説得力に欠けているし、小松菜奈の祖父であり医師の石橋凌と助手(?)の井浦新のキャラクターがいかにも作り物臭い。彼らの医療施設や林遣都の住まいなどの美術も昭和ヒーローもののリメイク作品のようだ。
だが、小松菜奈のルックスと佇まいとでもいえる個性が、こういう不可思議なキャラクターにハマっている。
自分の心に芽生えたものは何か、と小松菜奈が泣き叫ぶ。
ムシを取り除く手術によって、その気持ちや記憶が消えてしまう恐怖と、二人が結ばれることは死を意味するという悲劇。
林遣都は、僕らはフタゴムシだと言って彼女を受け止める。
究極のラブストーリーとして胸を打つ場面だ。

映画は美しいラブシーンで終わる。

原作小説もコミカライズ作品も未読だが、変な話…だとは思う。

kazz