劇場公開日 2020年11月20日

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「登場人物の掘り下げ方、関係性の展開が秀逸」おろかもの 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0登場人物の掘り下げ方、関係性の展開が秀逸

2020年11月22日
PCから投稿

両親の死以来、支えあって生きてきた兄と妹。そんな兄が結婚することになるものの、どうやら兄には他に浮気相手がいるようだ。本作はまさにその現場写真を妹が望遠レンズでカシャリと激写する場面で幕をあけるが、探偵のように兄を尾行する妹の関心は、いつしか相手側の女性へと向けられていく————こうして文字にするとどこか薄暗さや閉塞感すら感じるかもしれないが、本編から受けるイメージはむしろ真逆だ。素晴らしい人間描写。巧みな関係性の展開。決して押し付けがましくもなく、軽妙さと誠実さとの合間にあるタッチで観客を物語の内部へグッと引き込んでやまない。「結婚」というまさに家族のかたちの変容する過程に着目し、あえて妹のモヤモヤした視座から物事を見つめることで、刻一刻と深度を増す彼女の気づきと発見と洞察が一人一人の人物を実に魅力的に輝かせていくのだ。各々の感情のせめぎ合いをじっくり長回しで収めた場面も見応えがあった。

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牛津厚信