劇場公開日 2022年2月4日

「仲良くもないが嫌いでもない、フツーのクラスメイト」大怪獣のあとしまつ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0仲良くもないが嫌いでもない、フツーのクラスメイト

2023年11月7日
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鑑賞方法:VOD

「この死体、どうする?」というキャッチコピーの段階で真面目シリアス路線なわけ無いのだ。予告で出てくる「誰も見たことがない空想特撮エンターテイメント」とか、「そりゃそうかもね」ぐらいのギリギリ真実を攻めている。
あまりに派手に「クソ映画」認定され、低評価がズラッと並び、「どんだけクソ映画なんだろう」という好事家の食指を動かしまくっていたせいで、むしろそんな感じのしょーもない祭には参加しづらくなってしまい、ほとぼりが冷めた今、やっと鑑賞出来るタイミングになった。
絶賛するような作品じゃないが、本当にごくごくフツーのコメディ映画である。

「大怪獣のあとしまつ」は大きなくくりで言えば社会派コメディだが、本筋はラブストーリー。この話の焦点は「なぜアラタが最後の最後まで秘密を明るみにしないのか」であり、ユキノを巡る三角関係は絶対に外せない要素なのだ。
それ取っちゃったら何も成立しなくなっちゃう。
物語の最初から最後まで、雨音はユキノの心を求めてるし、アラタはユキノのそばに存在することを求めていて、「大怪獣のあとしまつ」をどうするのかというのは単なる環境の話なのだ。
強いて言えば、雨音は怪獣の死体を上手く利用し、自分の立場を活用してアラタをユキノから遠ざけようとしている、ってくらいか。

コメディの部分が下品で笑えない、という意見も多いみたいだが、この辺は捉え方の問題かな~。
例えば岩松了演じる国防大臣は何が何でも下ネタを挟まないと気がすまないようだけど、ああいうオッサン少なからず現実にもいるよね?別に全然面白くない下ネタなんだけど、どーしても言いたい!みたいな人。
「ああ、ウチの会社にもいるな~」と思いながら観ていると、ネタじゃなくてその必死さというかこだわりが、何だかだんだん面白くなってきて「くだらね〜!」って笑えてくるんだよね。そういえば会社でも(くだらね〜!)と思いながら聞いてるなって。

ざっくりまとめると、「大怪獣のあとしまつ」はしょーもないことを全力でやって、それを観た人が「しょーもな(笑)」ってなる、そういう映画なんです。しょーもないのが当たり前、それをクソ真面目にとらえて「何が面白いのかわからん」ってなっちゃったら、もう嗅覚というか選球眼というか、映画選びの問題だから。何でも真面目にやれば良いってもんじゃないから。
とはいえ、別に好みでもないから評価の理不尽さに肩入れして星5をつけるほどでもない。ちょっと困っちゃうよね。
皆にからかわれてるクラスメイトに、自分だけは普通に接するようにしよう!みたいな感覚かな。かと言って毎日一緒に帰ったり、家に遊びに行ったりするほどでもない、みたいな。

まぁ、冒頭にも書いたがフツーに面白いよ。傑作とは言えないし、絶賛もしないけど、ちょっと不謹慎に茶化して社会を見る視線と心の余裕は持ちたいものだね。

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つとみ