劇場公開日 2020年7月10日

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「「辞書」の持つ重み」マルモイ ことばあつめ sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「辞書」の持つ重み

2023年12月28日
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鑑賞方法:VOD

「博士と狂人」や「舟を編む」などの作品同様、本作も「辞書」の編纂がストーリーの柱だったが、言葉を集めて意味を定義するという、「辞書」の持つ意味と重みを考えさせられた。
言葉は、文化そのもの。文字の読み書きができないパンスであっても、暴力に関わる微妙な言葉づかいの違いには敏感だったり、方言集めにユニークな発想を持ち込んだりと、彼がこれまで生きてきた道のりが、辞書の内容の豊かさや正確さに繋がっていく。そのパンスが少しずつ文字を獲得し、自分の世界を広げていく様は、「言語の確立=文化の成熟」を観客に追体験させる仕掛けになっていたように感じた。
また、この映画は、その国の言葉の使用を意図的に制限するというのは、正に「蹂躙」そのもので、相手の尊厳を踏みにじる目的以外の何物でもないことをきっちりと描き出す。
劇中に登場する「日本語しか話せない少年たち」を見て、きっと誇らしく思う日本人はいないだろう。その居心地の悪さは、これからも大事にしていきたいと思う。

sow_miya