劇場公開日 2020年10月9日

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「「望み」とは?」望み R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「望み」とは?

2024年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

息子タダシの仲間が何者かに刺され、遺体で発見された。
警察の捜査上に浮かび上がった「タダシ」は、もう2日間も帰ってきていない。
ざわつき始める周囲と、誹謗中傷の渦の中に巻き込まれてゆく家族。
誰もがタダシは犯人じゃないと言うが、心の中は半信半疑だ。
父は、タダシが小刀を持って出た情報から、信じていると言いながらも疑心暗鬼が募る。
母は、犯人でもいいから生きていてほしいと望んだ。
この微妙なスタンスが、家族を引き裂いてゆく。
このどんよりと思い流れが後半まで続く。
タダシも、少年AとBによって殺害されていた。警察は両親に、「子供の本当の姿を知ったとき、一番悲しいのです」という。
さて、この作品のタイトルの「望み」とはいったい何を指すのか?
この作品という条件で言えば、起きてしまった事件後の「望み」なわけで、それが両親の中で違ったニュアンスがあり、それが亀裂の原因でもあった。
救いは、タダシは家では何も話さなかったが、将来の展望や尊敬する父の言葉を大切に押していたという、彼の本当の姿が美しかったことだろう。
私の息子は小児がんで生まれて、何度も腸閉塞で入院手術という経緯がある。
私が息子に望むのは「ただ生きていればいい」だけ。
大学生になってもゲームが好きで、帰省した時は一日中遊んでいるが、それでいいと思っている。
息子が入院していた時、そこには奇形の奇形といわれるような子供たちがたくさんいた。
肛門がない、腸がない…
その親たちはみな、生きてほしいとだけ願う。健康を願う。
これ以上のものはないと思う。
それだけで十分だと私も思う。
親が子供に「望む」のは、それだけでいいと思う。
子供がどれだけ正義感が強くても、死ねば、空になってしまう。
あの、家族写真のように。
そうなってしまえばもう何も望めない。

R41