劇場公開日 2021年2月12日

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「【”鳥の巣を守る”人々。真の慈愛と、恩寵。二人の女性と一人の男性のミステリアスな関係性と、全ての謎が氷解した時の、深い余韻に浸れる作品。】」秘密への招待状 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”鳥の巣を守る”人々。真の慈愛と、恩寵。二人の女性と一人の男性のミステリアスな関係性と、全ての謎が氷解した時の、深い余韻に浸れる作品。】

2021年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

ー 原題は「アフター・ウェディング」。オリジナルのデンマーク映画のタイトルも「アフター・ウェディング」・・ー

■感想<Caution! 内容に触れています。>

1.今作では、2度、”鳥の巣”が映し出される。
 1度目は、ジュリアンムーアが演じた、成功した女性実業家テレサが自宅の庭で、木から落ちてしまった”鳥の巣”を両手で取り上げるシーン。
 2度目は、ミシェル・ウイリアムズが演じた、イザベルが久しぶりにインドに帰った際に、彼女が我が子の様に可愛がっている男の子が”あそこに鳥の巣があるよ”と指さすシーンである。
 ー ”鳥の巣”は、二人にとっての”家族”を象徴している事が分かる。ー

2.18歳の時に、子供を産んだが、育てる余裕がなく産院から姿を消し、現在は償いの様に、インドの貧民の子供達を養う孤児院を何とか遣り繰りしているイザベルの元に、テレサが200万ドルの支援金を申し出たと連絡が入るシーン。
 しかも、テレサはイザベルにニューヨークに来ることを要求する。
 ー この時点まで、私はテレサがイザベルに対し、1歳の乳飲み子を捨てた事を後悔させるつもりなのだろう・・、と思いながら鑑賞した。
 それ程、テレサの行いがミステリアスなのだ。そして、そのように観客に思わせるジュリアン・ムーアの演技の素晴らしさ。ー

3.テレサの現在の夫オスカーが、且つてイザベルと同じ理想家として惹かれ合い、子(グレース:恩寵)をなしていた事実が、グレースの結婚式にテレサに無理やり出席させられたイザベルの驚愕の表情で分かるシーン。
 ー 巧みなストーリーテリングである。
   その後、グレースのオスカーに対する態度の変化。
   (それは、そうだろう・・。実の母親は死んだ、と聞かされてきたのであるから・・。)
 そして、実の母イザベルに幼き日々の写真を見せるシーン。
 罪の意識が隠せないイザベル。
 難しい役柄を、ミシェル・ウイリアムズが、流石の演技で魅せる・・。
 二大女優の演技が、同一画面で観れる僥倖感に浸る。

<テレサが一代で築き上げた会社を売却し、そのほとんどをイザベルの孤児院に寄付しようとした理由。
 テレサが泣きながら、イザベルに依頼した事・・。
 テレサもイザベルも、自分が築いてきた”鳥の巣=家族”を必死に守ろうとしていたのだ・・。
 全ての謎が氷解した際に、人間の善性、慈悲の心、天の恩寵を感じ、涙腺が崩壊しそうになってしまった作品。

<2021年5月8日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU