劇場公開日 2021年5月14日

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「「家族たち」というタイトルの意味」海辺の家族たち よしえさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「家族たち」というタイトルの意味

2021年7月25日
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鑑賞方法:映画館

過去の反映が嘘のように寂れた海辺のリゾート地。もう住人すら僅かに残っただけであり、その人たちも終焉に向かうのを待つだけだ。隣人夫婦は町の運命に寄り添うように自死を選び、主人公一家も認知症の進んだ父親をはじめ、兄二人と妹の三兄弟も次の世代を持たず、おそらくはこの地で細々と終わりを待つのみ。
日本における農村の過疎化を重ねてもよい。要はそうして忘れ去られていく土地だということだ。
そこに流れ着いた難民の子どもたち。言葉も通じない三人の姉弟という、新しく異質な「家族」を迎え、交流の始まりを予感させるところで、物語はさらっと終わりを告げる。この後は観たものそれぞれに委ねられたのだろう。もちろん、このまま何事もなく物語が続いていくことはあり得ない。おそらくは難民姉弟を強制送還を強行しようとする当局と、この子達を受け入れようとする兄妹との間に一波乱も二波乱もあるのだろうけど、それを描く必要はないというのが、監督の判断でもあろうし、わたしはこれで良いと思う。良い余韻を残した映画。

よしえ