劇場公開日 2020年6月5日

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「バランスとアンバランスの均衡」ルース・エドガー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0バランスとアンバランスの均衡

2023年11月4日
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アメリカという国は、一部の優秀な人間がその他の愚民を率いる教育方針だ。有能な者はどんどん引き上げ、ついてこれない者は次々切り捨てられる。
アメリカという国は、個人レベルから、自分の利益のためならばそれ以外がどうなってもいいと考える。自分が、自分たちが全てを得ようとする。
アメリカという国は、人種のるつぼだ。差別も根強い。差別への反発として抵抗意識も強い。

アメリカが抱える問題点や、アメリカ人らしい思考を巧妙に組み込んで、笑えるくらいにおぞましく恐ろしい脚本は関心するしかない。
ある意味で、アメリカという国を表現したらこうなりましたのような作品だ。

メチャクチャ面白いというわけではないので絶賛はできないけれど、当事者のアメリカ人ではないからこそ関心を持って観られる作品だったのではないかと思う。
アメリカ人にとっては普通の日常で、何が面白いのかわからないだろうから。
つまり、この作品に潜む不気味さがアメリカ人にとっては不気味に感じないということだ。

チラッと映る、アフリカ系だけのチアの面々が「私たちは出来る」と掛け声をかけながら練習に励むシーンなどは、更に凝縮された「濃縮アメリカ」のようで、面白くもあり気味悪くもある。
物語のバランスに対して、アフリカ系だけのチアというのは実にアンバランスだ。このバランスとアンバランスで均衡が取れているところが気味悪さの理由だろう。
なんともチグハグなのである。

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つとみ