劇場公開日 2020年6月5日

  • 予告編を見る

「折り畳まれたたくさんの心」ルース・エドガー ユウコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0折り畳まれたたくさんの心

2020年7月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

一連の事件は、ルースが首謀者ではあるが、どこまで?どれとどれ?と細かいところが曖昧なまま。
サスペンスを明らかにするのが主眼というより、本人も気づいていないような偏見、ルサンチマン、プライドといったものが薄皮をめくるように提示される。
この映画で示されるのは「型にはまる・はめる」という、この社会で要求される生き方だ。皆、自分の役割を知り演じている。型を破ろうとして差別意識を顕在化しようと授業するハリエットにしても、差別を打ち破り成功したマイノリティ像をルースに求める。(そのあげく、ほかの生徒を下げる行動をとるとか。本末転倒)
意識高い系のエミーも、その意識の高さゆえにルースや夫や自分自身にも無理を強いてる(が自覚はない)
理不尽な出来事も矛盾だらけでも、答えをはっきりさせなければならないことがあるし逃げられない。その息苦しさ。
そして、最大のアンビバレンツは、名前を奪われルーツを否定されたことに強い怒りを覚えながらも、成功者としての地位を勝ち得たことを受け入れているルース自身だ。その涙も、年とともにどんどん心が磨耗して忘れ去るのかもしれない。と大昔の若者は切なくなった。

ユウコ