劇場公開日 2020年7月17日

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「図書館はホームレスのユートピア!?」パブリック 図書館の奇跡 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0図書館はホームレスのユートピア!?

2022年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

とても暖かい優しさに包まれる佳作です。
1シーン、1シーンの全てが練られて考え抜かれた脚本が素晴らしいです。

《ホームレスの図書館立て篭もり事件の顛末》
を、描いた映画です。
2018年(アメリカ)監督・脚本・製作・主演・エミリオ・エステベス。
構想10年。クリスチャン・スレイターには10年前に脚本を渡したそうです。

オハイオ州シンシナティの公立図書館の3階のフロアを70人のホームレスに占拠された。
外は寒波が襲来して、ホームレスの凍死者が毎日出ている。
ホームレスのジョージが口火を切り、図書館員のスチュアート(エミリオ・エステベス)は
ついつい協力してしまう。

警察の交渉人ビル(アレック・ボールドウィン)や、郡の検察官ジョシュ・ディヴィス(クリスチャン・スレーター)が、対応に追われる。
(ジョシュは次期の市長選に立候補予定)
そして警察車両やテレビの中継者が集まり全米の注目を集めることに・・・。

テレビ・リポーターの言い方はまるでスチュアートがホームレスを扇動して指揮してるような言い方・・・フェイク・ニュースはこうやって流されるんだなあ(怖い、怖い)

ホームレスの彼らは一夜の暖を取りたいだけ、スチュアートは「出て行け!!」
と、言えなかっただけ!!
スチュアートには強く彼らを追い出せない理由があった。

女性配役もすごく良かったです。
スチュアート同僚図書館員のマイラ。
アパートの管理人のアンジェラ。
アンジェラは図書館の外からスチュアートにアドバイスする司令官(?)
スチュアートの人物像が本当に素敵でした。
ホームレスの過去や、逮捕歴、アルコール依存症からたちなおり、
アパートの中は菜園・・・人の痛みを知る人です。
スチュアートが電話口で「立て篭もりの理由」を問われて、
スタインベックの「怒りの葡萄」の一節を朗読するシーンは、
素晴らしい!
「怒りは葡萄を大きく育てる・・・」

ラストはなんと、なんと、なんと・・・とてもハートフルでユーモラスであったかい!!
今度のことで、なにも変わらないかもしれないけれど、何事にも最初の一歩はある!

(エミリオ・エステベスは80年代の青春スターで、マーティン・シーンの息子)
(監督としても印象的な仕事を今回も果たしました)

琥珀糖