劇場公開日 2021年1月29日

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「リアルと親近感に徹した恋物語」花束みたいな恋をした みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0リアルと親近感に徹した恋物語

2022年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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菅田将暉、有村架純の共演ということで、劇的な展開の派手なラブストーリーを想像していたが全く違っていた。二人の大学生の恋愛の春夏秋冬を斬新な手法を使って、時代背景を取り込んで、緻密に綴った典型的なビタースイートなラブストーリーだった。

本作の主人公は、大学生の山根麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)。彼らは、終電に乗り遅れたことで偶然出会い、二人の共通点、共感点が多いことで意気投合し、次第に惹かれ合っていき同棲生活を始める。当初は、些細なことまで完全共感でき、幸せに満ちた蜜月状態の二人だったが、時間が経つにつれ、僅かな考え方の食い違いが起きるようになり、次第に二人の想いは噛み合わなくなっていく。そして、就職時期を迎え、自分の夢を追って生きるのか、自分の夢を捨てて生活のために就職するのかで、二人の心は乱れていく・・・。

麦と絹の心情を麦と絹自身がナレーションで吐露するという手法で、観客に情報提供される。観客も二人の心情を察するのではなく100%把握できる。二人のラブストーリーは、二人だけではなく、観客も二人に同化させられる。また、二人が恋愛中時代のトレンドが架空名ではなく実名で登場する。二人の恋愛のリアルさ、親近感は、従来のラブストーリーとは比べ物にならない。観客自身が麦であり絹になってしまう。

また、二人の恋人としての距離感がユニークである。甘い言葉もなければ、潤んだ目で見つめ合うこともない。愛し合っているのは分かるが、有り触れていて自然である。これが嘘のないリアルな距離感だろう。

本作の山場は、春夏ではなく秋冬の部分である。菅田将暉、有村架純のシリアスな演技のぶつかり合いは見応えがある。夢を追うか、現実的に生きるか、ここでも本作はリアルに着地する。

ラストで二人は恋愛の起点を目撃する。そして、二人が紡いできた恋愛への想いが溢れ出す。ナレーションはない。二人の想いは観客の想像に委ねられる。

みかずき