劇場公開日 2020年2月14日

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「カメラだけでなく考え尽くされたストーリーにも注目」1917 命をかけた伝令 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5カメラだけでなく考え尽くされたストーリーにも注目

2020年6月26日
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鑑賞方法:試写会

第一次世界大戦下の“若き2人のイギリス兵の1日”をワンカット風ドキュメンタリーの如く丁寧かつ臨場感一杯に表現した力作。
「危険が待ち受ける敵の陣地を突き抜け、遠方の味方に重要な伝令を行う」というミッションを受けるが、その不可能にさえ思える過酷さが、重さを増して視覚化されていく。
私が主人公だったら、「もうやめようかな」という選択肢さえ頭をよぎってしまった「体感型・走れメロス」のような作品。
バーチャルなゲームのクリアといった世界とは違い、アナログな装備と、死体の手触り感や臭いさえも伝わってくる状況に全身の感覚が奪われる。戦下における、たった1つの任務なのに見る側は何度も打ちのめされる。
本作のリアリティの源泉は革新的な映像表現だけでなく音楽も重要な役割を果たしていて、文字通り「命をかけた伝令」である本作を陰ながら寄り添い盛り上げてくれている。
主人公が真っ直ぐに進む様を盛り上げるシーンなど、本作の醍醐味でもある各々の場面での感情の揺らぎを表現する巧みな「オーケストラ」としての調和が素晴らしい。
僅か1日という期間の中でも過酷過ぎるが故に出てくる人間らしいエピソードに心を打たれながらも、映像の魔力により自分自身もその場に存在しているかのような気持ちになる。そのため戦争というテーマの重さがずっしりと心と体にのしかかっていく。
見終わった後は、戦争の実態を伝え続けるためにも戦争をテーマにした本作のような名作映画はいつまでも登場してほしいと強く念願した。

山田晶子