劇場公開日 2020年6月1日

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「加害者になるとはどういうことか」許された子どもたち 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5加害者になるとはどういうことか

2020年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

事件には被害者と加害者がいる。ニュースを見た時に多くの人が想像するのは、「自分や家族が被害者だったらどうしよう」ということだろう。反対に、自分やその家族が加害者になることを想像する人は、相対的には少ないだろう。
だからこそ、いざ自分の子どもが加害者になった時、どう対応すればいいのかわからない。実際、自分が加害者であることを想像することは大変なストレスである。被害を受けるのも大変つらいことだが、加害者となった時のそれは質が異なる。
この映画は、加害者側を徹底的に描いているのが良い。加害者になることを想像できない(したくない)我々に代わって、加害者になるとはどういうことかを教えてくれる。
事件後、少年の家族は逃げるように引っ越すことになる。名前を変えてもばれてしまう。いじめで殺した側だった少年が今度は世間からいじめの対象となる。これを単に「因果応報」としてしまっていいものかどうか。このいじめの連鎖はいったいどこまで続くのだろうと暗澹たる気持ちになる。加害者がいるから被害者が出る。加害する心理は本当は誰でも理解できるはずなのだ。この映画が示すように、誰もがいじめたい欲望を抱いているのだから。内なる加害の欲望を自覚して初めて、それをコントロールできるようになり、加害を止められるのではないか。

杉本穂高