劇場公開日 2020年6月1日

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「誰も救わず、救われない冷酷な世界」許された子どもたち 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5誰も救わず、救われない冷酷な世界

2020年7月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

難しい

公開終了ギリギリに観ることができました。
いじめによって同級生を殺してしまった少年たち。
だが、彼らは裁かれなかった。
事件後の被害者、加害者、共犯者、無関係の偽善者たちを主犯の少年市川絆星の視点で描いていく。
まず、実際の数々の少年事件を基に構想8年で作り上げた甲斐あって、内藤瑛亮監督にしか描けない傑作に仕上がっていました。
そして、とにかくリアルです。
被害者は勿論傷つき、加害者側家族もマスコミやネットで叩かれ、何処へ逃げてもとくていされ、幸せを奪われていく。
登場人物たちの心情や置かれる立場がコロコロ変わるので、展開が読めず、その上なんとなくモヤモヤ感が残るのが素晴らしい作りだと思います。
正義と悪についても考えさせられました。
正義も過剰になると悪となる。
転校した学校でのいじめ、いじめのターゲットの変更及び、ネットでの断罪と称したプライバシーの拡散、特定。
そうやって、いじめは伝染するんだなと感じました。
この物語に絶対の正義は存在しません。
登場人物皆どこかおかしい。
単にいじめの怖さを伝えるわけではなく、二次的災害的な部分にまでスポットを当てているのが印象的でした。
最後に一つ言えるのはいじめやそれに関係した過ちは、決して許されないということ。
ネット社会となった今だから観ておきたい、社会風刺もよく効いた衝撃作でした。

唐揚げ