劇場公開日 2020年1月24日

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「ふかふかの土」いただきます ここは、発酵の楽園 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ふかふかの土

2020年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

登場人物はみな笑顔。
アニメーションを駆使し、ザ・ハイロウズの曲や、宮澤賢治の詩や曲の出し方もセンスが良く、“見せ方”は洗練されている。
なんだか新興宗教やアクティビストの“勧誘ビデオ”のような、ヤバイ香りのする作品である。
帰宅後に調べてみると、「奇跡のリンゴ農家」の人が出演し、玄米酒の「寺田本家」の人がトークゲストに出るなど、知る人ぞ知る世界のようだ。

“洗脳”されること請け合いである。

とはいえ、内容はまともだ。
題名から想像される「発酵食品」の話ではなく、無農薬・無化学肥料の「有機農業」の話であり、“発酵”する肥料で作った土を扱った作品だった。
今は、DNA解析による科学的な根拠に裏付けられて、“細菌”や“菌類”に対する態度が、“殺菌”から“共生”へとパラダイムシフトしているという。
「菌ちゃんふぁーむ」の畑では、微生物が多く、土と菌が一体化した“ふかふか”の土なので、踏んでもなお“ふかふか”だし、簡単に作物を引き抜くことができるという。

なお、“細菌”と“菌類(酵母や菌根菌)”は別の生物のはずだが、この映画では良くも悪くも、かわいいイメージで「菌ちゃん」と一括りにしている。
この作品の雰囲気やコンセプトを、典型的に示していると思う。

土壌化学の知識もないので、理解できないことが多々あった。
しかし、自分が痛感したのは、今の科学で分かっていることは、自然の一部にすぎないということだった。
例えば、自分は毎日、PETボトルに詰められた野菜ジュースを飲んで、ビタミンやミネラルを摂取している“つもり”なのだが、それで十分か?
「抗酸化能」といっても、実験的に定量可能な一つの指標にすぎない。

環境に良い、というだけでは、消費者の財布のひもは緩くはならないだろう。
モンサント(バイエル)社の化成品で作られた食品は、人体に危険で摂取効率も悪く、「有機農業」で作られた食品は、少量でも身体に良いとなった時に、“コスト”の壁は突破され、本当の変化が起きるはずだ。

Imperator