劇場公開日 2019年11月15日

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「ザ・ニュースペーパーとのツーショットがめちゃ面白い!」i 新聞記者ドキュメント kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ザ・ニュースペーパーとのツーショットがめちゃ面白い!

2020年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『新聞記者』を観る前にと望月衣塑子著の「新聞記者」を読んでみた。思っていた望月像とはかけ離れていて、世間で言われるリベラルなんて思想はまったく感じず、あくまでも中立を保ったまま記者魂を貫き通した女性との印象だった。この映画も彼女の素顔や日常を追いかけるドキュメンタリーであり、森達也の意見なんてのは最後に語られるだけでした。

 だからこそ、その質問攻めにする望月衣塑子の純粋さが伝わってくるのだし、報道の自由、国民が知りたい権利、メディアの堕落など、日本が抱えている諸問題を直接訴えてくる映画だったかと思います。

 この映画の大まかな内容は、辺野古基地建設問題、伊藤詩織さん準レイプ事件、森友学園問題、加計学園問題など。辺野古では赤土が10%を超えるか否かで菅官房長官に質問攻め。さらに、宮古島新基地建設での爆薬庫が住民に知らされずに建てられようとしている事実。住宅街があるにも関わらず、世代も変わり老人ばかりいる地域に金を積んで解決しようとしている実態もあった。

 森友に関しては、籠池夫妻も映画に出演し、人の好さをアピール。しかも、原発反対、改憲反対などと、まるでリベラが主張する姿に驚きと笑いがあった。彼らの教育方針には全く賛同できないが、大阪のおっちゃん、おばちゃんも首相夫人に裏切られて開き直ってるところが印象的だった。

 森達也監督もかなり姿を晒しているのですが、これは明らかにマイケル・ムーア監督から影響を受けているのでしょう。突撃取材にも似た官邸前での警察とのやり取り、そりゃ無理だってわかってるのにやってる微笑ましさ。しかし、その目的は官邸記者会見に出席して望月氏をどうしても撮りたい願いの現れ。ドキュメンタリー監督としての意思表示なのだ。

 色んな問題が山積していますが、長期政権になればなるほど政治の腐敗が進むことは歴史が証明しているという点。政治家、官僚、メディアもみんな乗っかってしまえといった風潮と、敵対するものは排除する思想。こんな時こそ報道の力で闇を照らそうとしなければならないのに、望月衣塑子が孤軍奮闘している構図であり、記者クラブの誰もが追随しない悪循環。さらに、闇の部分では自殺者も出るのは世の常だし、忖度しなければ命がないともされる世の中でもある。

 この作品のインパクトが強すぎて、権力を監視することが報道の役目という予告編により気になっていた『さよならテレビ』をちょっと後回しにしてしまいました。とにかく記者は政治的無色にならなければならないのは作品中にも語られていた。政権交代が行われたとしても、その新しい権力を批判するのがジャーナリストの使命なのです。彼女がいなければ、官邸記者会見はいつか大本営発表と化していたことだろう・・・

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kossy