劇場公開日 2020年8月21日

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「スパイダーマンの活躍を見ているような」2分の1の魔法 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0スパイダーマンの活躍を見ているような

2021年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

わざわざ遠くの駅まで出かけて行き、字幕スーパー版で見てきました。

ディズニーピクサー作品は、『トイストーリー』『リメンバー・ミー』のヒットで結実したように、日本語吹き替え版に一定の評価もあり、それなりの予算も使って作り込んであるので安心して見ていられるのですが、今回は事情が違います。

トム・ホランドが主人公の声を担当しているからです。なにしろ彼はスパイダーマンでの八面六臂の活躍ぶりで人気を博していますが、それ以外の芸歴がほとんど無いに等しい。彼の運動神経や芝居の上手さはわかっても、その奥行きまではうかがい知れなかったのです。『シビルウォー キャプテンアメリカ』に彗星のように登場し、まるで往年のマイケル・J.フォックスが帰って来たかのような名調子のセリフを連発し、原作のスパイダーマンが持つおしゃべりな雰囲気を取り戻してくれたトムホも、それ以外の表情というとほとんど伝わってきません。むしろキャリアが順調すぎて、スパイダーマン以外の仕事が挟まる余地が無いのではないかと心配になってしまうほどでしたから。

結果として、字幕版で見て正解でした。映画そのものが楽しめたかどうかはともかく。まるでピーター・パーカーがそのままアニメになったかのようなトムホ節(とむほぶし)全開の活躍で、彼以外のキャストでは考えられないハマりっぷりです。むしろ、日本語吹き替え版がどんな出来になっているのかが逆に気になる有り様です。

かつて魔法が支配していたという主人公の世界観の作り込みは、細部までよく考えてあるのですが、もはやこのレベルではピクサー作品としては平凡なレベルにまで落ちてしまいます。まるで家で飼われているミニチュアダックスみたいなドラゴンとか、ゴミ箱をあさっている野良犬のようなユニコーンとか、ひとつひとつを取り上げたら面白い設定なのに、あまりにも雑に散らかしてあって、ただ考えただけという印象がぬぐえません。

魔法の旅も、どこかの映画で見てきたような既視感がつきまとい、「あー、きっとこの先こうなるんだろうな」と思ってしまいます。これまでの魔法使いが登場した映画を塗り替えてしまうような大転換の映画になったのならともかく、あくまでも世界観を彩るスパイスとしてそういう魔術的な要素をそろえただけの雑な造りにも思えます。

ピクサーを維持するために、我々は夢を生み出し続けなければならない

いかにもこんなスローガンが、寒々しく聞こえてくるような気がしてしまうのはコロナのせいでしょうか。エンタメのマジックを以てしても世界は救えない。現実の世界の混乱のほうが、ドラゴンが暴れる町の混乱を凌駕してしまっているので、しばらくはクリエイターにとって受難の時が続きそうですね。

2020.8.25

うそつきカモメ