劇場公開日 2019年10月11日

  • 予告編を見る

「父と娘の絆が眩しい、タイトに引き締まったパニック映画の傑作」クロール 凶暴領域 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0父と娘の絆が眩しい、タイトに引き締まったパニック映画の傑作

2019年12月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

競泳選手のヘイリーは日夜厳しい練習に励みながらも思うように成績が伸びず苛立ちを募らせていた。そんな折実家のあるフロリダが巨大ハリケーンが接近、仲違いして疎遠となった父と連絡が取れなくなったことを姉から知らされ、渋々実家へ向かったヘイリーは地下室で意識を失っている父を発見するがそこには巨大な影がうごめいていた。

『ハイテンション』、『ヒルズ・ハブ・アイズ』、『ピラニア3D』等情け容赦ない凄惨な作品を手掛けてきたアレクサンドル・アジャの今回の相方は巨大ワニ。なんとなく雰囲気的にはハリケーンに襲われた小さな町で強盗グループと戦うロブ・コーエン監督の『ワイルド・ストーム』と似ているいかにもB級な佇まいの作品ですが、実家周辺というミニマルな環境で人間を食い散らかす様は圧巻。たった一人でズタボロになりながらワニと戦うヘイリーを演じるカヤ・スコデラーリオがとにかくカッコよく、新世代のスクリーミング・クイーン誕生に胸が躍りました。彼女の父を演じるのは様々な映画で堅実な演技で脇を固めるベテランのバリー・ペッパー。物語のド真ん中に据えた父娘の絆をしっかりと支えていて本作をパニック映画を越えた人間ドラマに昇華させているのでこんなタイトルの映画なのにめちゃくちゃ泣けます。ほとんどサビしかない『ドント・ブリーズ』にも似た閉鎖空間でのハイテンションなサスペンス演出に手に汗が滲んで、ただでさえ短い上映時間があっという間に過ぎます。とにかく傑作です。

よね