劇場公開日 2020年7月24日

「オーディエンスを一体化する奇跡のスポーツ。それが野球だ。」アルプススタンドのはしの方 masamiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5オーディエンスを一体化する奇跡のスポーツ。それが野球だ。

2020年9月4日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

楽しい

きっとこれは野球映画なのだろう。グラウンドは一切映らないのだが。でも眼に浮かぶ。熱くなる。心が踊る。

さていつものように枕を書こう。しかし困った事が起こった。夏の高校野球のシーズンの私の休みの日のスケジュールはこうである。

朝は5時くらいに起きてまずMLB(メジャーリーグ).を見る、9時から高校野球だ。4試合くらい見る。夜は18時からNPB(日本プロ野球)を見る。21時くらいに終わる。
そしてスポーツニュースを見る。ザッピングして全局見る。もちろんスポーツ新聞は必須。

うーん。馬鹿である。野球馬鹿。野球の夢を見る事も多い。

だから野球の話になると終わらない。ネバーエンディングベースボールストーリー。

ここまでは枕の枕である。長い。申し訳ない。何を語るか考えた。過去はいいかなあ。今の話しと・・・

未来の話をします。

時は、5年前に遡る。埼玉県の公立高校の少年の話である。夏の日テレビで高校野球を見ていた。信じ難い光景を目撃する。なんと・・・

中学校の時の友人が出ているのだ!衝撃を受けた。輝いていた。羨ましかった。そして・・・嫉妬した・・・

少年の中で、何かが動いた。コトリ。そうだ!
野球は楽しい!見ても楽しいがやるのはもっともっともっと楽しい!野球をやりたい、心底思った。しかし・・・彼は・・・

陸上部だった・・・甲子園に出る資格さえない。中二まで軟式野球部だったが、怪我と周りとの実力差を感じ退部した。それで陸上部に入ったのだった。もちろん競技には打ち込んでいた。頑張った。野球を忘れるために。しかし・・・

野球への情熱は消えていなかった。埋み火のように彼の底に残っていた。甲子園に出ている友を見てまた火がついたのだった。否、バックドラフト。爆発である。火が酸素を求めるように。

意を決して陸上部を退部した。高校の野球部には入部しなかった。途中から入るのも気が引けたし、上下関係もある。なにより硬球の経験がない。そこで近隣の野球クラブに入った。

そこで彼は野球を楽しんでいたのだか、また驚愕の事態が起こった。なんと・・・

親友の松本くんがサッカーのプロ選手になった!そして松本くんは日本代表になったのだった。

コトリ。彼の中でまたなにかが動いた。雲上人。松本くんは同列にいたのに・・・遥か高い空に昇ってしまった。さみしさ、あせり、ねたみ、憧れ 沢山の感情が溢れてくる。

このまま草野球を楽しんで、そのまま大学に進めばいいかなあ。そう思っていた。しかし・・・彼の中で新たな埋み火が発生したのだった。

プロになりたい。沢山の人に注目されたい。しかし・・・夢のまた夢。扉は見えない。

彼は独立リーグに入った。その名も富山GRNサンダーバーズ。頑張った。努力した。あの日、あの夏、その気持ちを胸に抱いて。そして奇跡が起こったのだった。なんと・・・

NPBのスカウトの目に止まったのだ。2017年のドラフト会議。世間は怪物清宮幸太郎に注目していた。彼は指名された。!僥倖!天啓!ただし育成枠である。少し説明しよう。

プロ野球の球団には選手登録の枠がある。70人。無限には増やせない。しかし育成枠で何人か指名できる。

ドラフト1位の契約金は1億円、育成枠の彼の支度金は300万円である。桁が二つ違う。金額は球団の期待値だ。即ち約30分の1だ。

育成枠の選手は厳密にはプロではない。プロ予備群だ。3年で支配下登録を勝ち取らないと解雇となる。
それでもなんとかプロへの扉に指さきが届いたのは間違いない。しかし彼の前にまた新たな壁が立ち塞がる。それは・・・

まず練習についていけない!強豪高校の野球部は信じられない程の過酷な練習をしているのだ。クラブチームでも独立リーグでもそこまでの練習量は、無い。練習後一歩も動けない。身体が悲鳴を上げた。実家に電話して弱音も吐いた。

寮に帰り、あの松本くんから貰った色紙を何度も何度も眺めた。シンプルな一言。

野球頑張れ!

たったそれだけだ。しかし胸に沁みた。

また彼は生まれつき食道が人より細く、その為食べるスピードが遅かった。給食の時、気づくと自分しか食べていない。満腹感を得てしまうので量も食べられない。1番嫌いな言葉は、早く食べなさい。

スポーツ選手は体が資本。食べるのも仕事のうちである。大きなハンデ。必死に食べた。あの夏の日の想いを胸に。少し、しょっばかった。

2軍戦だが少しづつ結果を残してきた。しかし彼の前に、再度大きな壁が立ちはだかる。一体何か?それは・・・

時間である。

前述したように育成の選手は3年間しか球団にいられない。彼はソフトバンクの柳田の打撃フォームを見た。何回も何回も。柳田と同じ肉体を持ち同じ打撃フォームをすれば柳田になれるかもしれない。そう思った。しかし・・・

無理だった。異次元の住民。神さま。大魔王。
柳田にはなれない。しかしタイムリミットは近づいてくる。彼は自分の最大の武器、スピードを生かす事にした。

走塁はスピードが命。しかしそれだけではない。リードする距離。帰塁。スライディング。次打者との呼吸。練習に練習を重ねた。

2020年の練習試合、彼は走った。走った。また走った。
そのスピードが首脳陣の目に止まった。そしてついに6月初日に支配下登録を勝ち取ったのだった!やったー!彼の名は・・・

和田康士郎。(わだこうしろう)

千葉ロッテマリーンズ所属

そしてそのスピードが井口監督の目に止まった。あり得ない事が起こった。なんと1軍登録されたのだった。

扉は開いた。やっと、やっとだ。プロになれた。和田くんにとってこれはゴールだ。また途中経過でもある。しかし・・・やはりスタートである。

スタート。何回でも言うスタートだ。

出番はいきなりやってきた。6月19日公式戦の初戦。アウェイのソフトバンク戦。0ー1で負けている9回の表。2死ランナーなし。負け寸前である。ロッテの角中がヒット。そして代走、和田。ソフトバンクのバッテリーは 森ー甲斐 。

心臓を直接触られている。そんな気持ち。走れるのか?甲斐はNPB最高のキャッチャー。甲斐キャノン。走れるのか?大丈夫か?しかし和田は些事には囚われない。走る。走る。俺は走る。それだけだ。そして・・・走ったーー!判定は?

セーーーフーーー‼️‼️

そして次打者のヒットでホームに帰ってきた。
お帰り。ギリギリで同点に持ち込んだ。ただその裏のソフトバンクは点を取りサヨナラ負けになったが。

そして和田くんは代走要員だったのだが外野の選手の怪我による離脱によりスタメンに名を連ねる事になった。つまり守備にもつくわけだ。

外野の和田くんは、肉食系の猫科の動物だった。恐ろしいスピードでボールの落下点にはいりキャッチする。チーター。多分前々世はチーターだったのだ。あの白球は死んでも取る。

早すぎて相手チームのファンも拍手する。そんな選手になってきた。見てみたい。心から思うそんな選手になってきた。

現時点で盗塁数はパリーグで1番だ。育成出身で盗塁王を取った選手はいない。時代の扉を開いて欲しい。心からそう思う。しかし・・・

和田くんのストーリーはまだ始まったばかりである。現在21歳。まだまだ続く。

あの夏の日の想いを胸に和田くんは今日も走る。明日も走る。明後日も走る。

今日(9/3)もヒットを打ち、盗塁を決めた。

そしてあの時の少年、友人が甲子園に出ていて衝撃を受けた少年、再び野球に恋に落ちた少年。
時を戻って声をかけたい。曰く・・・

少年よ、神話になれ‼️

はい。長い長い枕を終わります。多分こんな長文を読んでくれる人はいないだろう。でも・・・
語りたかった。どうしても。殆ど和田くんへの私信(ラブレター)

映画は良かったです。凄く。みんな大好き!野球って素晴らしい‼️画面には映らない矢野くん。やったね。

長くてすみません。映画の話がなくてすみません。そして読んで頂きありがとうございました。

masami
masamiさんのコメント
2020年9月11日

marimariパパさま、こんな長文を読んでいただきコメントまでては有難いかぎりです。神田伯山、良いですよねー
こちらこそ宜しくお願いします。

ーーーーーーーーー
皆様熱いお言葉ありがとうございます。
私はこの映画に出てくるある人物に心を奪われたのです。あっ?出てこないかあ。誰だかわかりますよね。彼の事を考えているうちに和田くんに思いを馳せてこの長文を語りました。
皆様のレビューを読ませて頂くと同じ想い方が結構いました。嬉しかった!
多分、長文の上コメントも頂きここまで読んでくれる方は少ないでしょう。
再度言います。

ありがとうございました。

masami
marimariパパさんのコメント
2020年9月10日

素晴らしい野球講談をありがとうございました。
masami之丞改めmasami山ですね、まさに!
失礼ながらナイツの寿限無ジャイアンツネタ版を思い出しました。
これからも楽しみにしています。

marimariパパ
masamiさんのコメント
2020年9月6日

カール様コメントありがとうございます😊私は千葉よりの東京在住です。和田くんは基本センターです。
そうなんです。書くとなるとハードルが上がるので、語りを文字化する。
そんな気持ちです。

masami
カールⅢ世さんのコメント
2020年9月6日

和田くんはセンターですか?
いい話をまるで講談のような感じで。
お見事。
やー、現実は演劇より奇なりですね。
Masamiさんは埼玉ですか?

カールⅢ世
masamiさんのコメント
2020年9月5日

CB様、読んで頂けるだけでもありがたいのにコメント、お褒めのお言葉、至福でございます。和田くんすごいですね。

masami
CBさんのコメント
2020年9月4日

すごいすごい!!
和田くん、速いなあ、と毎日感心していたのだけれど、こんな背景を持った選手だったなんて。
このレビュー、もはやひとつの映画ですよ。俺、恥ずかしながら、読み終わって目頭、熱くなっちゃってるし。いや、最高!!

CB
masamiさんのコメント
2020年9月4日

ぷにゃぷにゃ様コメントありがとうございます😊千葉在住だったのですね。千葉最高です。和田くん注目して下さいね。
ーーーーーーーーー
皆様有り得ない長文、しかも映画に触れていない。大丈夫か?アップしていいのか?葛藤がありました。読んで頂きコメントまで頂けるとは思いませんでした。恐縮至極でございます。もう一回言わせて下さい。
ありがとうございました。

masami
masamiさんのコメント
2020年9月4日

kossy様コメントありがとうございます😊そう言って貰えるとニヤニヤしてしまいます。本当に優しいですね。
多謝でございます。

masami
masamiさんのコメント
2020年9月4日

blood様コメントありがとうございます😊確かに二行しかない!ほぼ最小。すみません。枕が長すぎたので・・・
削りました。野球って面白いですよね。

masami
masamiさんのコメント
2020年9月4日

NOBU様コメントありがとうございます😊笑いの要素が無くてすみません。有難きお言葉、感謝します。

masami
masamiさんのコメント
2020年9月4日

グレシャム様コメントありがとうございます😊本当にそう思います。野球が、見られるのも当たり前ではないです。

masami
ぷにゃぷにゃさんのコメント
2020年9月4日

地元なのにロッテの試合は2〜3回しか見にいってません。選手もよくわからないです。和田康士郎、調べておきます。

ぷにゃぷにゃ
kossyさんのコメント
2020年9月4日

masamiさんへ、文字だけでも十分伝わってくる感動ストーリー、ありがとうございました!
熱闘甲子園大好きです。試合は見なくても熱闘だけは見るようにしてました。ちなみに熱湯コマーシャルも好きでした!

kossy
bloodtrailさんのコメント
2020年9月4日

masamiさんへ
素晴らしい野球愛ですね!今日は、お笑いだけでは無く感動も頂きました!
映画レビューは2行(スマホ画面で)です。潔く0でも良いですよ! と言うか、わだすは映画内容に触れてないレビュー、たくさんありますw

bloodtrail
NOBUさんのコメント
2020年9月4日

おはようございます。
 ”どれだけ、野球好きなんですか!”と突っ込もうと思っていたら、
 今回は素敵な”スポーツ掌編”でしたね。
 ”頑張っていれば、誰かが見ている” 青臭いですが、私はそう思っています。(何だか、朝からすいません・・)
 では、又。
ー毎回、masamiさんのレビューを楽しみにしている”1ファン”より。-

NOBU
グレシャムの法則さんのコメント
2020年9月4日

どんな形でもプロ野球が再開できて良かったということですね。
世の中から、ひとつでも多くの〝コロナだからしょうがない〟がなくなることを祈るばかりです。

グレシャムの法則