劇場公開日 2021年6月4日

  • 予告編を見る

「そもそも私に色なんてあるのかなあ?」猿楽町で会いましょう 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5そもそも私に色なんてあるのかなあ?

2021年6月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

たまらなく切なくて仕方なかった。若い役者のみずみずしさ。見事な心理描写。かずかずの刹那的な言動は、けっこうクズの部類かもしれないけど、それは上昇志向の若者の欲望のよじれ。
小山田の、はち切れんばかりの下心の純真さ。そのやましさを自覚しているからこその自制心が、ある瞬間に外れ暴走しだす。その怒りをコントロールしようとする理性の痛々しさ。金子大地、見事だった。
ユカは、人を傷つけることの罪深さに鈍感でありながら、自分が傷つくことを極端に嫌う身勝手さ。可愛くはない。たまに、あれ可愛いかも?と思う。ちょうどよくいる地下アイドルレベル。そこが妙にリアル。そして時おり見せる様々な感情が、同じ人間か、と思わせるくらいに違う顔をしている。石川瑠華、見事だった。
そしてみんな、当たり前のことながら、相手に対する愛情や依存度によって違う、人間関係の濃さ。それが匂わんばかりの体臭を感じるのだ。じっとりする湿気を感じるのだ。ダレることなく描いた監督も、見事だった。
書きたいことあってもネタバレになるので伏せておく。おそらく、嫌な奴だと思いながら、それを自分がしたことはないか?と問われれば、そこまでクズではないと言い返す。だけど、一つくらいは心当たりがないこともないかな。いや、どうだろう。ないよ、たぶん。あれ?自分が過去に恋愛で傷ついたと思っていたのは、むしろ傷つけていたのか?と過去を振り返ってしまう。そんな気分。

栗太郎