配信開始日 2019年4月30日

「お馬鹿映画だけれど、侮れない。」流転の地球 superMIKIsoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5お馬鹿映画だけれど、侮れない。

2020年1月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

Netflixで鑑賞。
最近の中国映画のパワーは凄まじい。本作も中国だけで600億円を稼ぎ出したという。鑑賞料金差を考えると、ハリウッド映画の世界興行金額にも匹敵するほどの恐ろしい金額だ。
ここまでくると中国映画は国内市場だけを狙っても、充分製作費を回収することが出来る稀有な市場ともいえる。
本作も中国市場をメインに製作されたと思われるが、内容の良さから世界中で公開され、Netflixでの世界配給という形になったと思われる。実際作品の出来は世界レベルである。ここまでくると、ハリウッド大作映画さえ凌駕している部分も多々ある。
内容は太陽が膨張して地球が飲み込まれそうになり、地球もろとも太陽圏外へ脱出するというSFの王道的なストーリーだ。しかし実際に地球が太陽の膨張で飲み込まれるのは、数十億年後と推定されているので、本作の僅か百年後という設定は科学的根拠は全くない。ストーリー展開もご都合主義だが、アルマゲドンを見て楽しめた方などは充分満足して頂けると思う。自己犠牲的な部分も含めて本作と非常に似通っている。
本作の美術は欧米SF映画よりも日本のSF漫画やアニメに大きな影響を受けていると感じられる。宇宙船や乗り物のデザインはもとより、建物などに描かれているロゴなどは、大友克洋や弐瓶勉の作品、またエヴァや、宇宙戦艦ヤマトの影響を色濃く受けている。本作を観ているとまるで日本のSFアニメが実写として動き出した感さえ受けるのだ。
本作のCGの物凄さは特筆ものである。海外の特撮会社に依頼せず、中国本土で全て製作されているらしい。確かに今やハリウッド映画が、中国のスタジオで撮影したり、特撮を任せたりもしているので、技術的には充分世界レベルなのだろう。
中国人が世界を救うなどという展開は、現実世界からみると失笑物だ。でもそこを切り離せば映画として楽しめる作品であると思える。
本作の評価は人それぞれだろうが、それ以上に重要なのは中国が初めてブロックバスター映画を手掛けて、それを成功に導いた作品であるということだ。大袈裟かも知れないが、今後世界映画史において重要視される作品になるような気がする。

superMIKIso