劇場公開日 2020年6月19日

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「☆☆☆★★★ 『ニュー・シネマ・パラダイス』発 『オール・ザット・...」ペイン・アンド・グローリー 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5☆☆☆★★★ 『ニュー・シネマ・パラダイス』発 『オール・ザット・...

2024年3月9日
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☆☆☆★★★

『ニュー・シネマ・パラダイス』発

『オール・ザット・ジャズ』経由

『8 1/2』行き

…と、思わせての『オール・ザット・ジャズ』へと戻り…。

…やっぱり『ニュー・シネマ・パラダイス』が終着駅(笑)

観客2名。 簡単に。

フェリーニの『8 1/2』は、その後の映画史に画期的な変化をもたらしたのだと思う。
それまで、映画中映画は成立してはいたが。そこに芸術家の苦悩を織り込むなど、誰も考えないものだった。
(当時の状況を完全に把握している訳では無いので、おそらく…って事で)

ところが、『8 1/2』の更に凄いところは。肝心の映画の中身を一言で表現するならば…。

「浮気してごめんなさい!」m(__)m

コレ…当時の状況を考えたなら、ほとんどの人が呆気に取られたんじゃなかろうか。

本作品、何だか『ウルトラQ』バリのオープニングから。主人公である映画監督役アントニオ・バンデラス(老けたな〜!ちょっとショック)が、水中リハビリ?をしながら、過去を回想する場面から始まる。

この回想場面には、過去の自分と一緒に。母親役のペネロペ・クルスが必ず登場し、ノスタルジーな回顧映像となっている。
それより何より、バンデラスの名前は《サルバドール》なのだ。『ニュー・シネマ・パラダイス』の主人公の名前が《サルヴァトーレ》なだけに…(笑)

更に言えば、バンデラスは背中の痛みを始めとして、身体の異変には薬物に依存し、その痛みを抑える毎日を過ごしている。

この日々の繰り返しは、『8 1/2』を下書きとして。ボブ・フォッシーが、自らの命を投げ出し完成された『オール・ザット・ジャズ』のロイ・シャイダーを、投影させているかの様に見える。

映画本編のほぼ半分以上は、この『オール・ザット・ジャズ』を参考に、アルモドバルは演出していたのでは?と、私には見えたのですが…果たして。

ところで『8 1/2』は、フェリーニが妻であるジュリエッタ・マシーナに対しての【謝罪】を、映画を通して描いていたのですが。アルモドバル版では、誰に対して謝罪をしていたのか?
本編の始めの内は、過去の作品で仲違いをした主演俳優に対しての様に見える。
実際問題、2人の間にあるわだかまりは。映画祭での上映(ここはかなりクスクスと笑える場面)後に、本音をぶつけ合った事から、新たな作品も生まれる。

その作品で題材になるのが、バンデラスが本当に謝罪したかった人物。
その人物が唐突に登場するのが、映画本編のほぼ半分辺り。
しかも、その人物の名前が《フェデリコ》だったのには、思わず椅子から崩れ落ちそうになりましたけどね〜(´Д` )

そのフェデリコが語る言葉に、「君の作品は常に祝祭だった」
(メモを取っていた訳では無いので、完全ではなく。大体、こんな感じの字幕だった)
思えば、『8 1/2』でのラストに、フェリーニ本人の分身と言えるマルチェロ・マストロヤンニが叫ぶ台詞が「人生は祭りだ!」(だったと思う)

このフェデリコ。作品中で唐突に現れては、また唐突に去って行くので、更に呆気に取られるですが。
1番始めに記した様に。
(こちらが勝手に最初に記した3作品を思い浮かべてしまってはいるのですが…)
この男が、アルモドバルに於けるジュリエッタ・マシーナにあたるのか?…と思うと、実に複雑な思いを抱くモノですなあ〜!
そんな唐突に現れる人物がもう1人居て。子供時代のバンデラス=サルバドールが出会うエドゥアルド。

彼は(確か)3〜4回本編で登場するだけなのですが。彼が何気なくしていた事が、その後のサルバドール=アルモドバルに多大な影響を与えていた、としたのならば…。
何とも言い難い不思議な感情が湧いて来るモノですなあ〜(u_u)

…………と、言いつつ。果て?俺は一体全体、何を見せられているのだろう?…とも。

今や巨匠扱いされているアルモドバルですが。この場面などは、初期作品の『アタメ』の頃の《変態性》が垣間見れ、ちょっとばかり懐かしさを感じたりしましたが…。

その様に、アルモドバル自身が。(自分の)過去を振り返っているかの様に見える作品ですが。その画面を見つめているこの俺は、一体何なのだろう?…とも同時に(;´Д`A

ただ、アルモドバルは、以前にも『抱擁のかなた』で、映画中映画を撮っていて。その際には、ヒッチコックの『汚名』を意識している(こちらが勝手にそう思ってはいるのですが)様な秀作が存在し。今回は、アルモドバル自ら、自身の人生を振り返るが如くに映画中映画を撮って…と。アルモドバル自身が人生の老朽に入りつつあるのだなあ〜と思って観ていたところ。映画は『8 1/2』のフィナーレを想起させるエンディングへと突入。
花火と照らし合わせた、映画の魔術を示すエンディングへ。

そこに映っていた〝 モノ 〟それは?

実にあっけらかんとしたハッピーエンドだった事に、思わず【草生える】思いっス(@ ̄ρ ̄@)

2020年6月24日 TOHOシネマズ流山おおたかの森/スクリーン5

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松井の天井直撃ホームラン