劇場公開日 2019年12月13日

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「不器用な男が建てた石の宮殿が訴えかけてくるのは」シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 MPさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不器用な男が建てた石の宮殿が訴えかけてくるのは

2019年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

死んだ妻に愛情のかけらも表すことなく、家を離れていく息子に別段別れの言葉をかけるでもなく、ひたすら、寡黙に、フランスの田舎道を行き来する郵便配達人。しかし、彼はある日、山道で見つけた風変わりな石のかけらを発見したことから、そんな人生への、家族への償いの気持ちを投入するかのように、石の宮殿の建設に没頭する。途中、神はさらに過酷な運命を彼にもたらすが、得られなかった普通の幸せや、家族との団欒の代わりに、遂に完成した宮殿は人々の目の前にそそり立つ。理論ではない建築物の圧倒的な存在感と、人生に於いてはすべてが平等だという真実が、深く胸に突き刺さる実話の映画化。不器用にもほどがある男の生き様は、器用さが重宝される今の社会への警鐘とも取れる。

清藤秀人