劇場公開日 2019年11月15日

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「じわじわと来る」いのちスケッチ 吏人さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0じわじわと来る

2019年11月15日
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鑑賞方法:映画館

幸せ

ありきたりの地方都市での小さなエピソードを、そのまま映し出します。主人公の活躍はなく、胸キュンのシーンもありません。遠浅の海岸風景や祭りのシーンは美しく勇壮ですが、「私の町にもあるよ」と言う程度です。国内初となる猛獣の無麻酔採血は、世界を変えたりしません。
だけど、この映画には、触れ合う人に向けるまなざしを柔らかくして、特別なことなどなにもない人生の輝きを増して、家族がいとおしくなり、故郷の町を歩きたくなる、そんな力があります。
クライマックスの無麻酔採血は、ヒロインの活躍というより、飼育員の地道な取り組みで成功に至り、大きな盛り上がりはありません。だからこそ、一つ一つのシーンが心に響きます。
「私は、いつの日かこの映画をまた見たくなるだろう」と予感させます。

吏人